デジタル事業者を使えば100分の1の経費でできる
976億円の無駄な支出にも批判が集中した。ITジャーナリストでソーシャルメディアコンサルタントの神田敏晶氏は、ネット銀行などのデジタル事業者を活用すれば、ムダな経費は100分の1に減らせると訴えた。
「事務経費は合計1200億円。内訳は現金給付に300億円、クーポン給付に900億円。つまり10万円で換算すると120万人分も経費で消える......。これはデジタルクーポンや、ネット銀行の事業者にシステムを構築させて配布したほうが絶対に安上がりで正確。ケタは数億円で作れる。現金といっても配布するのは銀行へのデータのみ。現在、お願いしている事業者を、まずは除外して検討すべきだ」
ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏もデジタルの活用を主張した。
「900億円の事務経費を削減できれば、より多くの人に配布や生活困難者により多くの給付ができたはずです。海外ではすみやかにほぼ自動的に給付がされる場合も多いです。春まで待たずすぐに給付をしたほうがよい生活困難者も多いでしょう。マイナンバーの管理を進める、コスト管理をしっかりして税金からの無駄遣いをなくしてほしいものです」
そして、住民と一番向き合っている地方自治体にこそ任せるべきだと訴えるのが、法政大学大学院教授(現代政治分析)の白鳥浩氏だった。
「10万円相当給付には、それに関わり利用する側の視点が欠けている。せっかくの公金の支出も、それを利用する側の利便性が十分なものでなければ、その政策効果も期待できない。より住民の目線に近いところにいる自治体が、次々と利用者目線から現金給付を望んでいることは理解できる。
これまでのコロナ対策、経済対策も、実際に現場で住民と向き合ってきたのは地方自治体ではなかったのか。クーポン券による支給方法の決定において、地方自治体の声が十分に反映されていたとは必ずしも言えない。国会での議論も、現場の地方自治体の声に配慮し、それを反映したものとなることが求められている」
(福田和郎)