激しい陣取り合戦を繰り広げる共通ポイントに、大きなニュースが飛び込んできた。
電子商取引の「ヤフーショッピング」などを展開するヤフーがTポイントとの連携を2022年3月末で終え、同じソフトバンクグループ(SBG)傘下のスマートフォン決済PayPay(ペイペイ)のポイントに集約すると発表したのだ。
共通ポイント業界では、提携先変更はたまに起きているが、このヤフーの判断は従来にない意味を持っていた。
ソフトバンク、PayPayポイントを強力推し!
これまでヤフーショッピングで買い物をすると、Tポイントとペイペイのポイントの両方が付与されてきた。この付与されるポイントが2022年4月からはペイペイのポイントに一本化される。
ヤフーは他にも、「ヤフーニュース」など10以上のサービスでTポイントと連携してきたが、一部のサービスを除いてTポイントの付与が終了し、利用もできなくなる。
そもそも2種類のポイントが付与されることに違和感を抱いていた人は、少なくないかもしれない。その背景を探るには経緯を振り返る必要がある。
2015年3月、Tポイントの運営会社「Tポイント・ジャパン」に、携帯電話会社のソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)と、ヤフーが出資したと発表された。両社の出資比率は計35%で、ソフトバンク陣営としてTポイント会員の購買履歴を分析して、マーケティングに活用する狙いがあった。
現在も運営会社の主要株主にはTポイントを始めたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に加え、ヤフーの親会社になったZホールディングス、ソフトバンクが名を連ねる。
だが、2018年秋にサービスを始めたペイペイは、独自のポイント制度を導入した。「100億円キャンペーン」を打ち出して利用者獲得を大々的に進める一方、福岡ドームの命名権を取得して「福岡PayPayドーム」に変更してまで周知を図った。
CCCとの調整が必要となるTポイントよりも、自前のポイントの方が扱いやすいのは明らかで、ソフトバンクグループ(SBG)におけるTポイントの重要性は次第に低下していった。携帯電話会社のソフトバンクもTポイントの付与を2022年3月末で終了する。
CCCの起死回生の一手に注目
ヤフーとソフトバンクがTポイントとの連携解消を発表した2021年12月1日には、SBGは新たなクレジットカード「PayPayカード」の提供を始めており、「Tポイント切り」に踏み切ることでSBGの戦略が完成形に近づく。集約する購買情報の精度を高めながら、自社決済アプリをさまざまなサービスの入り口にして顧客を囲い込むためのツールが、ポイントになるからだ。
レンタルのTSUTAYA(ツタヤ)の会員証から始まり、共通ポイントの草分け的存在だったTポイントにとって、合弁までしたパートナーの離脱は深刻だ。生き残りに向けた戦略の立て直しを迫られるが、競合するNTTドコモの「dポイント」、三菱商事系の「Ponta」、楽天グループの「楽天ポイント」は、いずれも資本力を背景にしたキャンペーンで勢力拡大を図っている。
企業の規模で劣る運営主体のCCCが、どういった起死回生の一手を打つのか注目が集まる。(ジャーナリスト 白井俊郎)