コロナ禍、病床数の確保できなくて当たり前? 医療ひっ迫でも病院数・病床数は大きく減少していた!(鷲尾香一)

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   新型コロナウイルスの感染が拡大し、医療ひっ迫が叫ばれる中でも、病院数と病床数は大幅に減少していた。

   2019年10月1日現在7246あった病院は、2021年9月末には92も減少し7154に、88万7847あった病床は1567も減少し、88万6280となった。

   厚生労働省が11月30日に発表した9月末の「医療施設動態調査」によると、病院数は8205で、このうち一般病院は7154となった。一方、一般診療所は10万4461だった。

  • 病院のベッドが足りないというけれど......(写真はイメージ)
    病院のベッドが足りないというけれど......(写真はイメージ)
  • 病院のベッドが足りないというけれど......(写真はイメージ)

一般病院数、減少の一途を辿る

   一般病院数は減少の一途を辿っている。2010年に7587だった一般病院数は、2019年までの10年間で341も減少し、7246となった。これに伴い、一般病院の病床数も90万3621から1万5774も減少し、88万7847となっている=下表1参照

   だが、この間に一般診療所は9万9824から10万2616へと2792も増加した。ところが、一般診療所の病床数は一般病院の病床数と同様に13万6861から9万825へと4万6036も減少した。

   この背景には、人口減少と高齢化が進む中で、人口減少により、救急救命や集中治療といった「急性期」の病床が余剰となる一方で、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者仲間入りを迎え、病床を削減して限りある医療費や医療資源(医師の数や負担など)を有効活用しようという国の方針がある。

   また、病院側にとっても、多くの病床を抱えていても、高水準の病床稼働率を維持できない限り、経営が困難な点もある。

   こうした国の方針により、一般病院が減少し、それと共に病床数が減少。一方で、一般診療所は無床の診療所が増加する半面、病床が減少する傾向が続いている。

   しかし、コロナ禍では医療体制のひっ迫が叫ばれた。そんな状況の中でも、国は病院数・病床数の削減を進めていたことは、2020年4月22日の「【襲来!新型コロナウイルス】感染症患者受け入れのベッドが不足している現実 それでも公立病院の再編・統合方針は覆らないのか!?」https://www.j-cast.com/kaisha/2020/04/22384671.htmlでも指摘した。

   厚労省が2019年10月に全国424の公立・公的病院について、再編・統合が必要として病院名を公表したことを取り上げ、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、国が病院削減を続けていることを明らかにした。

「非常事態」でも、国は病床数の削減方針を取り下げない

   今回発表された9月末の「医療施設動態調査」によって、2020年1月からの新型コロナウイルスの感染拡大の中で、2021年9月までの間に病院は74減少し、病床数も2143減少していたことが明らかになった=下表2参照

   一般診療所でも、診療所は1862も増加したにもかかわらず、病床数は5484も減少している。

   ところが、新型コロナ感染拡大の中で奮闘したのが、厚労省が2019年4月に再編・統合が必要とした424病院だった。これらの病院の多くは、感染症指定医療機関だったのだ。

   赤字体質で、診療実績が少なく、非効率な医療を実施していると指摘され、再編・統合が必要と名指しされた病院の多くが、新型コロナの感染拡大の中にあって、通常の診療を控え、赤字が拡大するのを覚悟のうえで、新型コロナウイルスの感染症患者を引き受け、結果的にかろうじて医療崩壊を免れたのだ。

   病院の必要性を経済合理性だけで判断したことの過ちに対して、こうした非常事態を経てもなお、国は病院と病床数の削減方針を取り下げてはいない。その経験則は、まったく生かされてはいないのだ。

   病院の必要性は、国民の健康維持を第一義に考え、今後も発生する新型コロナウイルスのような伝染病対策のあり方にも目配りをしたうえで、議論を進めることが肝要だ。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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