食肉最大手、日本ハムの株価が2021年12月2日に一時、前日終値比145円(3.8%)高の3945円まで上昇した。前日の1日に、主力のソーセージ「シャウエッセン」を含む400品目以上の出荷価格を2022年2月に5~12%値上げすると発表したことが好感され、終値も5営業日ぶりに上がった。
消費者にとってはうれしくない話だが、収益向上に寄与するとの期待が市場に広がった。食品の値上げでは、キユーピーも1日、2022年3月にマヨネーズやドレッシングを値上げすると発表。2日に株価が上昇した。
「シャウエッセン」初の値上げ
それでは、日本ハムの値上げを確認しておこう。家庭向けはハム・ソーセージ40品目、加工食品133品目の計173品目、業務用232品目、冷凍食品19品目で合計424品目。パッケージ容量の減少を含めて平均7%程度の値上げとなる。このうち、「シャウエッセン」の値上げは初めてという。
日本ハムは、値上げの要因を「ハム・ソーセージ及び加工食品の主原料や小麦粉・食用油等の高騰」としたうえで、「国際的な需要拡大が続いており、調達コストは今後も上昇する見込み」と説明。さらに、「エネルギーコストも上昇し、物流費や労務費なども増加している」と理解を求めた。
日本ハムは今回の値上げについて、2023年3月期において35億~40億円の増益要因になるとしている。コスト削減などによる20億~25億円の増益要因と合わせて60億円の原材料高による減益要因を相殺できると説明している。
野村証券は値上げ発表を受けたリポートで「値上げ効果が原材料高をカバーし増益要因となる可能性が高く、ポジティブな印象」と記した。「過去を見ても現状のような原材料高騰を値上げでカバーしきれないケースが多い」とも指摘しているが、日本ハムの場合、来期の前提が保守的なこともあり、カバーできるだろうとみているようだ。
こうした見方が株高につながったようだ。
プロ野球、新庄監督「ビッグボス」効果への期待も
ちなみに、日本ハムの2022年9月期中間連結決算(国際会計基準)は売上高が前年同期比5.2%増の6033億円、事業利益(営業利益)が10.6%増の242億円、最終利益が0.7%増の196億円だった。
業務用の需要回復が収益を押し上げたが、原材料高を踏まえて通期の業績予想は据え置いた。そうした中で投資家が待望していた値上げの発表だっただけに、株価は素直に反応した。
ただ、「値上げが浸透しない可能性や数量減などを考慮すると。その(増益)効果は大きく減少するだろう、...... 今後の動向を慎重に見たい」(SMBC日興証券)との指摘もある。
一方、日本ハムとして「その他事業」に位置づけるプロ野球球団の事業は、新庄剛志新監督による集客効果に期待が高まっている。コロナ禍で2020、2021両シーズンの観客は限定的だったが、2022年は入場制限がかからない可能性もある。そうなると、成績にもよるが、主催試合の観客動員数が2017年以来の200万人台となることも視野に入り、これも株価上昇に貢献する期待もある。(ジャーナリスト 済田経夫)