国、新生銀行の買収防衛策に賛成する「大義名分」なし
新生銀行を考えるとき、最大の問題が前身の日本長期信用銀行時代に資本注入された公的資金だ。大手行で唯一、返済が滞っている。その額は3500億円(国の株式保有比率は約2割)になる。国が損をしないためには株価7450円に高める必要がある。
国が、この2割の議決権を行使するか否か、するなら防衛策に賛成するか反対するかが新生銀行とSBIの攻防の焦点になった。
当初、「どちらかに肩入れするようなことは避けるべきだ」との声が金融庁内でも強かったというが、一方で、金融庁は機関投資家に対して経営陣との「なあなあ」ではなく、きちんと議決権を行使して結果を公表するよう促してきた。その手前、安易に棄権することを問題視する意見もあった。
新生銀行株を直接保有・管理する預金保険機構が、新生銀行とSBIに今後の経営方針について質問状を出し、その回答を検討するという手続きを経て、SBIの計画がまさると判断し、最終的に、新生銀行の買収防衛策に反対することを決めた。公的資金に穴を空けられない以上、現経営陣の計画では株価が7450円に向かって上昇していく見通しはたたず、防衛策に賛成する大義名分は見当たらなかったということだ。
国の方針が11月22日に明らかになり、新生銀行は24日、SBIのTOBへの意見を「反対」から「中立」に変更し、買収防衛策を諮る臨時株主総会の中止を発表した。この間、期待したSBIに代わる「友好的な買収者(ホワイトナイト)」も現れず、SBIの軍門に下るしかなかった。
新生銀行の工藤英之社長は25日に記者会見を開き、SBIが新生銀行の事業戦略を尊重し、少数株主に配慮する姿勢を示したとして、「(SBIに)私どもの経営方針を尊重するという譲歩をいただき、不透明感がかなり払拭されたためだ」と説明。しかし、国の防衛策反対方針で「勝ち目」がなくなったことが決定的だったのは明らかだ。