2021年も残り1か月を切った。昨年来のコロナ禍でさまざまな活動が「自粛」され、人々は悶々とした生活を送っている。夏に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの代表選手や、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手の大活躍に胸が熱くなり、救われた思いだった。
さて、来る2022年、干支は寅。2月には北京冬季オリンピック・パラリンピックが開かれる。世界は、日本の経済は? 人々の生活は......。12月は、そんな「2022年」や「寅」にまつわる一冊を取り上げたい。
12月に入り、書店には来年のトレンドを予測する本が並び始めた。その中で注目したのが、本書「2022年 日本はこうなる」である。シンクタンク・コンサルティングファームの三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめたものだ。
コロナ危機でデジタル化とグリーン革命が加速。脱炭素化、米中対立など、今知るべきトレンドと76のキーワードを解説している。「アフターコロナ」が前提となっているが、刊行後に「オミクロン株」が出現した。2022年の予測はさらに難しくなるだろうが、手掛かりとするには十分の内容とボリュームだ。
「2022年 日本はこうなる」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング編)東洋経済新報社
インバウンドの「復活」はさらに遠のく......
巻頭言で三菱UFJリサーチ&コンサルティングの理事長、竹森俊平氏が、2022年も国際的な人流の本格的な復活は望めず、非接触型の優位とデジタル化への追い風はそのまま続く、と書いている。年末になり、感染力が強いと見られる「オミクロン株」への警戒が世界的に高まるなか、インバウンドの復活はさらに遠のくのではないだろうか。
デジタルの地位が高まる中、これを活用できる組織、国民とそうでないものとの「デジタルデバイド」は拡大した。その影響は教育の格差にも及んでいる。本書ではデジタル関連の記述が随所に登場している。
脱炭素化政策の地政学的背景にもふれている。EU(欧州連合)は23年までに、炭素税の国際版ともいえる「炭素国境調整措置(CBAM)の導入を目指している。炭素排出量に応じた関税を各国の輸出に課すもので、アメリカも追随する可能性がある。貿易に含まれる炭素排出量の多い中国の輸出に対しては世界最大の関税額が課せられることになる。中国を狙い撃ちにした、ルールに基づく多国間の枠組みともいえる。