2025年「大阪・関西万博」の開催を意識
こうしてヒルトンブランドのホテルが相次いで大阪に誕生するのは、コロナ禍前には西日本を訪れる外国人観光客の拠点となっていた大阪の潜在力を評価しているからだ。海外からの玄関口となる関西国際空港があり、外国人に人気が高い京都や奈良に近い。大阪そのものはアジアに似た活気も持ち合わせている。「コロナ禍が起きたので止まっていただけで、感染が収束すれば訪日外国人は伸びていく」(ソーバー氏)との期待がある。
2025年には、大規模な国際博覧会としては国内で20年ぶりとなる大阪・関西万博が開催される。ヒルトンの両ホテルの開業時期は、2025年4月に始まる万博を意識したものだ。主会場となる大阪湾岸の埋め立て地に国内外から多くの人が訪れると見込まれ、既存のホテルだけでは不足しかねない。
ヒルトンの両ホテルが入居するビルは、4.5ヘクタールの都市公園を中央に抱くJR大阪駅北側の「うめきた2期」と呼ばれる再開発地区に建設される。ヒルトンはホテルの運営事業者であり、三菱地所やオリックス不動産などで構成する再開発地区のジョイントベンチャーが運営を委託する。オフィスビルや高級マンションも配置される再開発地区は2024年夏に「先行まちびらき」を予定しており、関西経済の浮揚に向けた起爆剤としての期待が地元で高まっている。
ただ、こうしたホテルの計画はコロナ禍の収束を前提としたものだ。国内では一たん収束に近づいたが、新たな変異株「オミクロン株」の登場で再認識されたように、世界全体で感染が収まるまでには相当の年月が必要となりそうだ。
オミクロン株では再び日本への出入国が制限されており、外国人旅行客をターゲットとするビジネスの投資の難しさを改めて浮き彫りにしている。
(ジャーナリスト 済田経夫)