税調DNAをもつ宮沢会長VS「安倍・高市」財政拡張派
ただ、岸田文雄首相は今回のインナーの顔ぶれ変更を契機に、官邸の主導権を強めたいと目論んでいるようだ。岸田氏が新たに税調会長に据えたのは、岸田派の宮沢洋一・元経済産業相。岸田氏とはいとこ同士で、地元も同じ広島という最側近だ。
宮沢氏は税調会長就任早々、岸田氏が総裁選で打ち出しながら、首相就任後に発言を後退させた金融所得課税の強化について、今回の税制改正では議論を見送る方針を示した。首相への援護射撃とみられる。
一方で宮沢氏は大蔵官僚(現財務省)出身で、伝統的に財政再建を重視するという税調のDNAを持つとされる。コロナ禍に伴って導入・強化された住宅ローン減税や固定資産税の特例措置を、いずれも縮小する方針を示すなど、甘利前会長時代の「緩和路線」からの方針転換を目指している。
ただ、こうした宮沢氏の動きが安倍元首相や高市早苗政調会長ら財政拡張論者が幅をきかせる自民党内を刺激している。党内からは「経済対策を打ち出すなど景気対策を最重視しているなか、税調は何を考えているんだ」と不満が漏れる。
「重鎮が一斉に去ったインナーにもはや力はない」(与党幹部)との声も出ており、インナーが党税調を牛耳り、党全体にもにらみをきかせるという、これまでの体制を維持するのは難しいとの見方が出ている。
宮沢氏は12月10日前後には税制改正大綱を取りまとめたい考えだが、官邸と自民党の思惑が入れ乱れる中、税制改正論議が予定どおり進むかは見通せない状況だ。(ジャーナリスト 白井俊郎)