弱者のサポートをした渋沢栄一
コロナ禍で、「分配」が政治のキーワードになった。弱者の救済についても栄一は論じている。
「弱者を救うは当然のことであるが、更に政治上より論じても、(中略)成るべく直接保護を避けて、防貧の方法を講じたい」(「論語と算盤)
安直に金銭を援助するよりも、自らの力で貧しさを脱却できるよう、そのサポートをすることが必要だ、と訴えている。
栄一は、教育、病院、社会福祉施設など非営利組織への関与も約600あると言われている。数としては、社会的な非営利活動の関与のほうが経済的な会社の関与より多かった、と指摘する研究者もいる。
「100の訓言」の100項目は、「富を永続させよう」。仁義や道徳によらなければ、本当の富を永遠に殖やし続けることはできない。「論語と算盤」。つまり道徳と経済というかけ離れて見える二つを融合することが、今、最も重要な自分の義務だと考えている、という趣旨が書かれている。
個人も社会もサステナブル(持続可能)であるためには、「論語」と「算盤」の両方が必要だというのだ。
岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の落としどころは、案外、このあたりではないだろうか。
今年(2021年)は、「青天を衝け」が放送され、栄一の関連書が数多く発行され、100年ぶりにスポットライトが当てられた年になった。さらに、栄一が描かれた、新1万円札は2024年から使われるので、このブームはしばらく続きそうだ。
「渋沢栄一 100の訓言」
渋澤健著
日本経済新聞出版社
712円(税込)