福利厚生は「目的でなく手段」 どこよりも早く手がけた「サブスク」実を結ぶ ベネフィット・ワンの白石徳生社長に聞く【前編】

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今までになかったような「新しい流通」をつくる

「資金面、人材面で社内ベンチャーはやりやすかった」(白石徳生社長)
「資金面、人材面で社内ベンチャーはやりやすかった」(白石徳生社長)

   ――ところで、起業する前はパソナにお勤めでした。

白石社長「ベネフィット・ワンは、スタート時点ではパソナの社内ベンチャー制度を利用して起業しました。『すべての会社を束ねた生協を作ったら』という目的で会社の生協『ビジネスコープ』という社名にしました。
そもそも、自分で会社を創りたいと思って、パソナに入ったのです。体制面では、パソナグループから人員の調達ができたので、助かりました。最初は一人から始めて、必要に応じて増やしていきました。資金面では、サブスクリプションのビジネスでお金が必要でした。その資金はパソナが調達してくれました。最初から億単位のお金が必要だったのがわかっていたので、手っ取り早さもあり、社内ベンチャーで始めたのです。今は、起業における資金調達はしやすくなっていますが、25年前では金融市場が整っていませんでした。社内ベンチャーの利点は資金調達が大きいと思います。事業計画では、当初は2億円ぐらいで黒字にすると考えていましたが、黒字転換までに結局6億円ぐらい使いました。ものすごい勢いで赤字を垂れ流していましたので、追加資金を出してくれたパソナには感謝しています。
その半面、『2年で単月黒字にする』という厳しい制約がありました。最終的に24か月目で単月黒字を達成し、ギリギリのセーフ。この黒字達成のために、どうやったら黒字になるかを1年前から逆算して、20人いた社員を8人までリストラしたこともありました。それは苦い経験でした」

   ――創業25周年になりますが、これまでの道のりはどのようなものでしたか。

白石社長「もともと我々には、日本人全員を会員にするビジョンがあります。創業25周年といっても、その実現に向けて25年も時間がかかっていると感じています。
日本では6500万人が働いています。日本の人口が1億3000万人ですから、2人に1人が働いているわけです。我々の福利厚生では、家族会員制度を持っているので、本人が会員であれば、家族である子供や親も利用できるので、理論上すべての会社で利用されれば、日本人全員が会員になる計算になります。25年経ってどうなのかというと、福利厚生の会員数が635万人で就業人口のちょうど10分の1です。ただ、ベネフィット・ワンを利用する企業は大企業が多く、日本の大企業や公務員は働いている人全体の約2割ですが、その中ではおよそ2~3人に1人が我々の会員になっています。
しかし、日本は8割が中小企業ですから、25年経っても全体の10%ぐらいなのです。逆にいうと、まだまだ成長の余地があるのです。そして今回、JTBの子会社を買収しましたので、今後10年ぐらいで実現していけるよう、加速をつけて推進していきます」

   ――ベネフィット・ワンが描く戦略とは?

白石社長「あくまで我々の最終的な戦略は日本人全員を会員にすることです。そうなるとサービスを提供するすべての会社は、我々の存在を無視するわけにはいかなくなります。それが最終的な狙いです。
そうなるとすべてのサービスは、ベネフィット・ワンのプラットフォームを介さないと売れなくなってしまいます。サービス提供において手数料は取りませんので、仕入れ原価である最安値での提供になります。消費者は安いところを選択しますので、すべての企業、消費者が利用するプラットフォームになるわけです。そこを目指しています。
ただ、これまでと同じやり方では時間がかかってしまいます。そこで、我々はこの会費を無料にしようと思っています。無料にする代わりに、新しいマネタイズポイントとして決済サービスを検討しています。これは給与天引き、電気やガス、水道、携帯電話、新聞などの決済を代行するサービスです。これまで決済の手数料が、給与の場合、手数料×従業員数だったのが手数料×ベネフィット・ワンの1回となるため、手数料支払いの大幅な削減が見込めます。我々はその決済のところに収入源を確保して、『会費もいらない、手数料もいらない』という、今まで世の中になかったような新しい流通をつくっていこうとしています」

(聞き手 牛田肇)

※ なお、後編は2021年12月4日付の公開になります。

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