コミュニケーションの中にイノベーションはある
ただ、全体にこのままオフィスの需要が減っていくとも言い切れない。ある企業関係者は「テレワークの環境は人によって異なり、必ずしも生産性が上がるわけではない」と話す。日本の場合、家が狭く、個室をもたない人も多いため、誰もが在宅で効率的に働けるとは限らない。コロナ禍で経営状況が悪化している企業も多く、社員の自宅の通信環境を整えるための費用を負担する余裕はない、という経営者も多い。
さらに、オフィスの欠かせない機能に気づいたという声も最近、強まっている。「リアルな場で社員がコミュニケーションを深める中でこそ、イノベーションにつながるアイデアが生まれる」と話すIT関係者もいる。オフィスでの何気ない会話の中にビジネスのヒントがあり、それはテレワークには期待できないものだというのだ。
米IT大手のグーグルは、出社と在宅を組み合わせた「ハイブリッド型」の新しい働き方を導入する方向だ。
コロナ禍を機に、オフィスの意味が根源的に問われている。今後は、オフィス勤務だけ、テレワークだけ、という単純な働き方ではなく、さまざまな目的や機能に応じた多様な働き方が広がっていく可能性があるようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)