東証再編「スタンダード」市場という実質を選んだ企業も
「週刊エコノミスト」(2021年12月7日号)の特集は、「東証再編サバイバル」。来年4月から東京証券取引所の大改革がスタートする。単なる市場区分の変更ではなく、上場企業が収益性向上の努力や株主との対話などを怠れば脱落するという「荒業」だという。
現在の5市場(東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックスタンダード、ジャスダックグロース)を、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編する。
東証上場の約3700社は12月30日までに、どの市場に移行するかを東証に申請・開示することを求められている。
各市場の上場維持基準を満たさない企業をふるい落とすことで、日本株市場全体の成長性や収益性の底上げを目指している。
日本証券経済研究所の明田雅昭・特任リサーチ・フェローが調べたところ、東証がプライム市場不適合を通知したのが664社だったのに対し、141社がプライム市場選択を表明、103社がスタンダード市場を選んだ(残る400社強は未表明)。「プライム」という体面より「スタンダード」という実質を選んだ企業が予想以上に多かったと見ている。
スタンダード市場を選択すると発表した企業には、北九州市の老舗百貨店、井筒屋や第二地銀の高知銀行などがある。
一方、東証2部やマザーズ、ジャスダック市場の中にはプライム市場選択を表明したメルカリがあるが、歯科医療用器具のナカニシなどスタンダード市場を選択する企業も少なくない。
今後の上場企業には、上場維持基準だけでなく、株価指数を通じた企業価値向上への圧力もかかる。東証再編と並行してTOPIXの見直しも進められる。
東京証券取引所の山道裕己社長はインタビューで、「3年後には『経過措置』の方向性を出す。プライム基準の引き上げもありうる」と話している。
「プライム市場合格」を支援するM&A仲介会社、証券会社、信託銀行、監査法人などは「空前の特需」に沸いているという。上場基準を満たすため、ギリギリまで駆け引きが続きそうだ。
(渡辺淳悦)