新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、消費活動に大きな変化をもたらした。なかでも深刻なのは、飲食、小売業を中心に実店舗が次々に姿を消していることだろう。
消費費活動の変化は、ネットショッピングの台頭に見てとれる。
実店舗での商売はいまや成り立ちにくい
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言に伴う外出と営業の自粛要請が、観光・宿泊業、飲食業、小売業、サービス業などのさまざまな業種に壊滅的な打撃を与えたのは、周知のとおり。
いまや店舗を構えても商売は成り立ちにくくなっている。ネットショッピングの利用拡大により、店舗は消えようとしている。「巣ごもり消費」が活発化し、消費の場は「店舗」から「ネット」へと大きくシフトを起こした。
総務省の「家計消費状況調査」では、インターネットを利用した消費の状況を調査集計、毎月発表している。それによると、「インターネットを利用した支出総額」=図1参照=では、コロナ禍の感染拡大が懸念され始めた2020年2月以降、支出額が急増していることが見てとれる。
この「支出総額」とは、全国の総世帯から抽出した世帯が1か月間に使ったネットショッピング額(食料、衣類、医療、雑貨、書籍、音楽、旅行など22品目)の1世帯当たりの平均を示している。
例年、12月はインターネットのショッピングサイトなどがセールなど年末商戦を実施するため、1年間で最も支出額が大きくなる。2019年12月は、前月から急増して1万7000円を超えた。
これも例年の傾向だが2月には、その年の最低額まで落ち込む。以後は毎月微増減の横バイで推移する。
ところが2020年は2月以後毎月急増し、6月には12月のセール時とほぼ同額の1万7000円台まで増加した。その後も、一度も2019年を下回ることなく、支出総額は増加を続け、12月には過去最高の2万円を突破した。
そのうえ、2021年に入っても、支出総額は2020年を下回ることなく、増加を続けている。新型コロナウイルスの発生前に戻ったとは言えないものの、2021年に入ると2020年よりも外出は増え、人出は回復して来ている。
それでも、インターネットを利用した支出が減少しないということは、すでに実店舗による購買に、インターネットでの購買が取って変わったことを示唆するものだ。
消費の場がインターネットの世界にシフトしているのがより鮮明にわかるのが、「ネットショッピング利用世帯の割合」だ。
2020年3月から増加に転じた利用世帯割合は、4月に大きく上昇して過去最高の47.3%を記録した。年末商戦でもない4月に利用世帯が急増するのは極めて異例だ。そして5月には一段と上昇し、調査開始以来、初めて50%を超えた。国内の半分以上の世帯がネットショッピングを利用したということだ。
その後も、利用世帯割合は大きく低下することもなく、2020年12月には54.6%の世帯がネットショッピングを利用した。
さらに、この傾向は2021年に入っても続き、年明け1月から9月まで51%を上回る水準を維持し続けており、すでに、消費の場がネットにシフトしているのが「一過性」ではないことは明らかだ。
「シャッター通り商店街」全商店街の4割超
中小企業庁は3年に1度、全国の商店街で実態調査を行っており、「商店街実態調査」として公表している。
この中で、商店街のうち空き店舗率が10%を超えているところを「シャッター通り商店街」と定義しているが、2018年10月1日現在の「シャッター通り商店街」は、全商店街のじつに41.3%を占める。
従来、空き店舗が発生するのは、商店主が高齢化し後継者が不在であることや、地域住民の高齢化や減少、あるいは大型店の出店などによる経営不振が主な理由だった。それが、コロナ禍によって、さらなる深刻な影響を受けている。
空き店舗が増加することは、商店街の魅力を失わせ、集客力も低下させる。ここにコロナ禍の影響による経営不振が加われば、今後さらに「シャッター通り商店街」が急増する可能性が強まる。店舗は否応なく、姿を消していくことになってしまう。
次に調査・公表される「商店街実態調査」は、新型コロナウイルスの感染拡大後の商店街の姿を浮き彫りにすることになる。果たして、実店舗は存続できているのだろうか。
(鷲尾香一)