ワクチンと治療薬が塩野義製薬株を左右する
前置きが長くなってしまったが、このような状況下で発表された塩野義とベトナム政府の合意である。じつは、日本では今秋に感染者が激減した影響で、国内だけで治験者を確保するのは困難と見られていた。
一方、ベトナムはワクチン接種の遅れもあって感染者数が高水準で推移し続ており、日本の製造業の生産拠点の操業にも影響している。ベトナム政府との合意は塩野義にとってはワクチンや治療薬の開発の前進につながるとの期待を投資家に抱かせるのに十分だった。
それは経済安全保障の強化を目指す日本政府とも連携し、海外で買ってもらう足がかりになろうという連想も働いたようだ。
ここへきて南アフリカ発の変異株「オミクロン株」の脅威から、日本政府が外国人の入国を原則禁止するなど、ベトナムとの協働にあたっての不安材料は出ている。他方、仮にオミクロン株にも効果があるとなれば、塩野義の株価はさらに上値を追う可能性もある。
いずれにせよ、新型コロナウイルス向けのワクチンと治療薬の動向が塩野義の今後の株価を左右することになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)