みずほ、3首脳がそろって退陣 それでも懸念される経営刷新、はびこる旧行を引きずる「タコツボ的」縦割り組織

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   システム障害を頻発させた、みずほフィナンシャルグループ(FG)は、ついに首脳3人が一斉退陣する異例の事態になった。

   2021年11月26日、金融庁が障害を起こしたみずほ銀行と持ち株会社のみずほFGに対し、銀行法に基づく2回目の業務改善命令を出したのを受け、みずほFGが首脳退陣を発表した。しかし、新体制はトップが未定など不確定部分があり、繰り返し指摘されてきた企業風土を作り変える道のりは険しい。

  • みずほ銀行の経営は刷新できるのか!?
    みずほ銀行の経営は刷新できるのか!?
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今年になって8回ものシステム障害

   金融庁は11月26日、2021年になって計8回のシステム障害を起こしたみずほ銀行とみずほFGに業務改善命令を出し、「短期間に複数のシステム障害を発生させ、個人・法人の顧客に重大な影響を及ぼし、金融機関の役割を果たせなかったのみならず、日本の決済システムに対する信頼を損ねたと考えられ、経営陣の責任は重大」として、再発防止や経営責任の明確化を求めた。業務改善計画を22年1月17日までに提出するよう求めている。

   また、財務省も11月26日、みずほ銀行の外国為替取引の処理が遅れた9月30日の障害発生時に、マネーロンダリング(資金洗浄)の確認作業を怠る外為法違反があったとして、みずほ銀に是正措置命令を出した。財務省が外為法違反で銀行に是正命令を出すのは初めてだ。

   これらの責任を取り、みずほFGの坂井辰史社長とみずほ銀の藤原弘治頭取が2022年4月1日付で辞任する。みずほFGの佐藤康博会長は処分の対象外としたが、同日付で会長職を退く。みずほFGのシステム担当の石井哲執行役、法令順守担当の高田政臣執行役も同日付で引責辞任する。

   みずほ銀行の頭取には、加藤勝彦副頭取を充てる。坂井社長の後任は22年1月までに決める見通しで、会長は当面空席とする。

   みずほ銀行の今年のトラブルは、J-CASTニュース 会社ウォッチも「今年はすでに6回も! みずほ銀行のシステム障害 問われる経営責任」(2021年9月7日付)などでも報じてきたが、2月28日に4318台のATMが停止したのを皮切りに、3月3、7、12日と立て続けにATMが停止、ネットバンキングや外貨建て送金などの取引ストップや遅れが起きていた。

致命傷となった外為法違反問題

   トラブル発生前に、4月1日付で藤原頭取が会長に回り、加藤氏が常務執行役から頭取に昇格する人事を発表していたが、トラブル発生を受けて撤回し、加藤氏の副頭取就任だけが実行されていた。

   その後、8~9月に再びシステム障害が頻発。金融庁が9月22日に業務改善命令を出したが、30日に外国為替のトラブルも発生。この一連の事態のなかで、みずほFGの坂井社長の退任圧力が高まった。

   特に深刻だったのが、財務省が是正命令を出した外為法違反の問題だ。システムという、実務的なミスと比べ、マネーロンダリングという銀行のコンプライアンス(法令順守)の根幹にかかわるという意味で、まさに金融グループとしての体質そのものが問われることになった。

   みずほ側では引責は藤原氏だけにとどめたい意向だったが、この外為法違反が「致命傷」になり、FGの坂井社長の引責に加えて、実質的に経営の一線から引いている佐藤会長も、みずほ銀頭取、みずほFG社長、会長と10年以上経営中枢に身を置いてきたことから、退任に追い込まれることになった。

   金融庁は今回の業務改善命令で、障害が発生した真因について、システムに関するリスクと専門性、IT現場の把握、営業現場の把握、「言うべきことを言わない」といった企業風土の4点を挙げた。

   具体的には、過去のシステム障害を教訓にした基幹システム「MINORI」が2019年、システム部門トップに就いた石井氏は人事畑出身で、以降、経営合理化の一環として関連部門の人員を約6割削減するなどしたことがトラブルを招いた大きな要因だ。こうした一連の対応が金融庁には「システム軽視」と映った。

新しい経営陣に「悪弊を絶つ経営刷新」ができるのか?

   さらに深刻なのが、「旧行意識」だ。みずほは2000年に日本興業、富士、第一勧業の3銀行が統合して誕生したが、FGの佐藤氏と坂井氏は興銀出身、みずほ銀行の藤原氏は第一勧銀出身、加藤氏は富士銀出身といった具合で、「たすき掛け人事」と揶揄されるとおりだ。

   いまや中堅以下の行員の大半は経営統合後の入行だが、幹部の意識、立ち居振る舞いは行内に必ず影響する。結局、旧行を引きずった縦割り組織で、他部門には言わない、他部門には言わせないというように「タコツボ的になっている」(金融庁関係者)という。

   大手紙は処分・辞任発表を受けた11月27日朝刊では大きく報じ、日本経済、読売、毎日の3紙は社説で取り上げた。

   「金融システムへの信頼を揺るがせた失態を考えれば『総退陣』は当然だろう」(日本経済新聞)とし、「トラブル多発で顧客の信頼を裏切ったにもかかわらず、退くのがまだ数か月先とは、あまりに遅いと言わざるを得ない」(読売新聞)と、即時辞任でないことを批判する声もあるなど、総じて厳しい論調だ。

   各紙、旧行意識の打破も求めるが、「人物本位を徹底すべきなのは言うまでもない」(日本経済新聞)、「今度こそ、悪弊を絶つ経営刷新にしなければならない」(毎日新聞)と、抽象的に書くしかないところだ。

   新しい経営陣が、この最大、最難関の課題にどう取り組むか。FG社長の選考はこれからというが、その人選が経営刷新を実のあるものにできるかの第1の試金石になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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