「テーパリング」が一気に加速する
日本のエコノミストたちは「テーパリングの時期は早まる」とみる人が多い。第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏は「急変するFRB テーパリング加速はもはや既定路線」(11月25日付)で、「テーパリングは一気に早まり、FRBは2022年半ばまでに資産購入を終了。22年半ばに利上げを開始するだろう」と予想している。
その根拠として挙げているのが、11月24日に公開されたFOMC(米連邦公開市場委員会=FRBが定期的に開く金融政策の最高意思決定機関)の議事要旨だ。
「この議事要旨から判断すると、テーパリング加速の蓋然性は高まっており、2022 年に複数回の利上げがあることを同時に意味している。早ければ(今年)12月14日~15日のFOMCでテーパリング加速が決定され(減額開始は来年1月)、資産購入は3月に終了する。最もタカ派なシナリオは3月のFOMCにおける利上げ開始。
議事要旨には『さまざまな参加者が、インフレ率が目標水準よりも高くなり続けた場合、FOMCは資産購入のペースを調整し、FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標レンジを参加者が現在予想しているよりも早期に引き上げる態勢を整えるべき』との記載があった。その後発表された(インフレの高進を示す)10月の消費者物価と雇用統計など一連のデータは、引き締めスケジュールの前倒しを検討するのに十分なほど強い結果であったと考えられる。また、それまでハト派な見解を固持していたFRB高官も動かしたと思われる」
藤代氏にとって議事要旨以上に衝撃だったのは、利上げに消極的だったハト派の代表格であるデイリー・サンフランシスコ連銀総裁のインタビューだった。
「『これまでの状況が続けば、私はテーパリングのペース加速を全面的に支持するだろう』『消費者物価指数の月間数字が再び高進した。これらはテーパリングの加速が必要なようだと示唆するものになる』などと発言。そのうえで『来年後半に1回、または2回の利上げが行われたとしても驚きはしない』として、2022年の『利上げ開始派』に転向した。
そうしたハト派に分類されるFRB高官ですらテーパリングの加速を支持し、利上げに前向きになっていることから判断すると、テーパリングの加速は既定路線と考えるのが自然だろう。パウエル議長の見解が変化しても不思議はない」
としている。