備蓄石油放出の背景にバイデン米大統領の支持率低下
今回の国家備蓄の放出は、米国政府が主導しました。主要国が足並みをそろえての備蓄放出は初めてで、追加増産を見送る石油産油国との駆け引きだと報じられています。
ところがこの駆け引き、専門家や市場関係者からは疑問の声が相次いでいるようです。
Release could have a short-lived and limited impact on the oil market
(放出は、原油価格に短命で限定的な効果しか与えない)
short-lived:短命の、短期間の
limited impact:限定的な効果
そもそも、今回の「異例」ともいえる各国協調放出の根底には、バイデン大統領の個人的な思惑があると指摘されています。原油価格の高騰が記録的な物価の上昇につながっている米国では、バイデン大統領の支持率が低下して、就任以来最低の水準にまで落ち込んでいます。バイデン大統領としては、各国を主導するリーダーシップをアピールして、支持率アップにつなげたいのでしょう。
さらに、バイデン大統領が備蓄の放出を発表したとたん、逆に原油価格が値上がりするという想定外の事態となりました。せっかくの歴史的な決断も「やぶ蛇」と酷評されています。
Biden backfire? oil prices surge after president orders oil reserve sales
(バイデン、やぶ蛇か? 大統領が備蓄石油の販売を指示したとたん、石油価格が高騰した)
backfire:裏目に出る、逆効果となる、やぶ蛇
surge:高騰する
「backfire」は、良かれと思って計画したことが、期待に反する結果となるという意味の単語です。辞書には、「逆効果」「裏目に出る」「やぶ蛇」「しっぺ返し」など、さんざんな訳が並んでいますが、とにかく「予想外の逆効果」であることは間違いなさそうです。
それでは、「今週のニュースな英語」は、この「backfire」を使った表現を紹介します。
My plan backfired on me
(私の計画は、まったくの裏目に出た)
My joke backfired
(冗談のつもりが裏目に出た)
I hope your plan doesn't backfire on you
(君の計画が逆効果にならないことを祈るよ)
それにしても、パンデミックの影響で経済活動が停滞していた昨年は、需要減で原油価格が記録的な低値を更新していたはずです。欧州を中心に再び新型コロナウイルスの感染者が急増するなか、素人が見ても原油価格の行方は不透明です。
バイデン大統領の呼びかけに応じて「異例の決断」をした岸田首相。年末を控え、「backfired」による価格高騰は御免被りたいところです。(井津川倫子)