住宅を探している最中に出くわしてしまう「おとり広告」って、なんだ!? 誰もが引っかかってしまう可能性が......(中山登志朗)

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これが「おとり広告」の手口だ!

   では、「おとり広告」がなぜなくならないのか――。その理由を考えてみましょう。

   「おとり」とは、何かをおびき寄せるために使う手段のことですから、不動産広告に沿えば、駅にも近くまだ築年数も浅いのに周辺の物件よりも、かなり割安に見える価格・賃料で表示されているようなケースが想定できます。

   実際に広告に表示されている物件は実在しないか、実在していてもすでに所有者や賃借人がいるために買えない・借りられない物件なので、「おとり」につられて問い合わせが来た場合は、先ほどタッチの差で売れてしまった・借りられてしまったけれど、ほかにも広告にまだ出していない&似たような物件を預かっているので見に来てくれれば紹介する、などと言葉巧みに誘い出し、契約を迫るわけです。

   つまり、購入希望客および賃貸希望客を、労せずに自分たちの手元に連れてきてくれるのが「おとり広告」なので、売り上げが減っているとか新規の扱いを取って是非成約したいと考える不動産会社は、安易に集客ができる可能性がある「おとり広告」に手を出してしまうのです。

   もちろん営業努力せずに、楽をして効率よく収益を上げることを最優先に考えている不動産会社も「おとり広告」を出す可能性が高いでしょう(そういう会社は極めて少数だと思いたいですが)。

   最近では手口が巧妙化しており、インターネット上の地図で物件の外観などから特定できることもあるため、住所などで該当しない物件は広告に掲載しなくなりましたし、明らかに安価であると思われる価格・賃料を表示せず、よく見ると物件のグレードやスペック(駅に近いとか幹線道路に面していないとか)の割にちょっとお得に見えるような設定にしているケースがあります。

   またこれらとは違って、結果的に「おとり広告」になってしまうケースもあります。それは広告を通じて成約しすでに買主・賃借人が決まったのにも関わらず、リソースが足りないとかほかの業務を優先したとか、様々な理由でその物件の広告を取り下げ忘れる場合です。自社サイトに掲載するだけでなく、提携しているサイトや不動産ポータルサイトにも掲載されていると、広告を落とし忘れたり、取り下げるまでにタイムラグが発生する場合もあります。これらはこまめに情報更新を怠らないこと、情報更新日時を明記して掲載時点では販売・賃貸可能であったことを明記するなどの対策が必要です。

   やや宣伝モードになりますが、私が所属するLIFULL HOME'Sでは2021年8月より、このようなうっかりミスを防止すべく、管理会社大手の大東建託パートナーズと提携し、物件が成約した段階ですぐに広告から削除する仕組みを開発・開始しました。

   ※なお、LIFULL HOME'Sでは「おとり広告」の撲滅に向けて、確信犯的な故意に基づく行為だけでなく、成約後に情報の更新を怠った「過失による結果おとり広告」もなくすため、以下の取り組みを実施しています。

   参考リンク:「業界最大手の大東建託パートナーズと情報連携、募集終了物件情報を用いた自動非掲載機能で情報精度を向上」

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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