リモートワークで上司は支援型に変わろう
リモートワーク下でのマネジメントでは、上司は管理型のマネジメントへの執着を捨て、一人ひとりを信じて任せる支援型のマネジメントに変わるべきだと説いている。そのポイントは5つだ。
(1)責任の明確化 信じて任せた仕事の当事者は部下自身
(2)仕事の具体化 脱あうん! 非言語コミュニケーションを言語化する
(3)反応の意識化 話し過ぎ・聴き過ぎに注意し、反応を伝える
(4)ツールの熟達化 メール、チャット、SNS、映像・動画の使い分け
(5)遠隔での仲間化 タコツボ化させないネット・ファシリテーション
コロナ禍の長期化で、オフィスワークのみならず工場にもリモートワーク導入の動きがあることにもふれている。アサヒグループホールディングスの例を挙げ、「工場でも在宅勤務ができるはず」「工程管理や機器の監視なら自宅からできるのでは」「できないと決めつけていたことも見直す。必ず方法はある」と徹底した検討を表明した。
アリババが中国で展開するスーパー「フーマー」では、リアル店舗もあるが、自宅からも注文でき、配送してくれる。最先端では、リアルの補助的な位置づけではなく、リモートやオンラインを前提としたビジネスモデルや働き方への転換が本格化しつつあるという。
新型コロナウイルスの新規感染者数が減り、心のどこかで従前の暮らしや仕事へ戻ろうと考えているのでは、と前川さんは問題提起している。
傷んだ人と人の絆は取り戻さなくてはいけないが、旧態依然とした働き方には戻りたくても戻れないと考えるべきだと釘を刺している。
たとえば、大打撃を受けた日本航空では、体験を提供する観光需要は戻っても効率を重視するビジネス需要は戻りにくい前提で事業計画を立てているという。遅々として進まなかった働き方改革は、コロナ禍でスピードアップを余儀なくされた。進むべき時計の針が、予想以上の速さで進んだものととらえるべきだ、としている。
リモートワークにはまだ課題は多いが、場所や時間の制約にとらわれない柔軟な働き方、効率性や生産性もシンプルに追求できると訴えている。
こうした発想の基本には、若手社員の価値観を理解しなければ、若者の離職を防ぐことはできないという認識があるようだ。働きがいが持てる企業であること、社員の幸せを向上させることが不可欠であると結んでいる。(渡辺淳悦)
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