11月は総務省の「テレワーク月間」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、一気にテレワークが浸透したが、新規感染者の減少とともに再び職場に通勤する人が増えてきた。しかし、テレワークの大きな流れは止まらないと見られる。今月は、テレワークや電話、コミュニケーションに関連する本を紹介しよう。
会社のあり方や働き方が様変わりするなか、コロナ禍の影響で人材の活用がますます重要になってきた。人材育成コンサルティングを行う株式会社FeelWorksの代表取締役の前川孝雄さんが、ニューノーマル時代の「人を活かす経営」を説いたのが、本書「人を活かす経営の新常識」(FeelWorks)である。
「人を活かす経営の新常識」(前川孝雄著)FeelWorks
「生き延びる力」とはなにか
前川孝雄さんは、リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て、2008年に起業。「上司力研修」「50代の働き方研修」、eラーニング「パワハラ予防講座」などで400社以上を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。著書に「一生働きたい職場のつくり方」(実業之日本社)、「50歳からの逆転キャリア戦略」(PHP研究所)などがある。本書はFeelWorksが出版事業を始めるにあたり、同社から刊行された。
経営者や人事責任者、管理職層に対して、これからの時代に合った人材マネジメントの手法を8つのテーマと50の講話で構成している。その中からコロナ禍に打ち克つ経営、リモートワークで問われるマネジメント改革にかんする事項などを抜粋して紹介しよう。
前川さんの会社もコロナショックが本格化した2020年3月以降の研修事業が軒並み延期や中止となり、厳しい経営状況が続いた。しかし、コロナの影響で新入社員研修を断念せざるを得ない状況を少しでも解消したいと、有料サービスだったeラーニング「新入社員のはたらく心得」をYouTubeで無料配信した。収益よりも社会貢献を考えたという。
コロナ禍でも顧客ニーズに敏感に呼応し、躍進を果たしたビジネスもある。リモートワークを支援するIT企業や、内食を手掛ける宅配企業などだ。業種や職種の違いを超えて、顧客ニーズを見据えたお役立ちのヒントがあるので、自社に応用できるものはしたたかに取り入れよう、と説いている。
コロナショックの時代を生き延びるために、前川さんが注目したのが、2018年にOECD(経済開発協力機構)が公表した「OECD Learning Flamework」だ。2030年に向けて子供たちに求められる能力とその育成内容、方法を示したものだ。「生き延びる力」は、「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」の3つから構成されている。
それらを敷衍し、前川さんなりに「生き延びる」方法を説明している。まず、30~40代の中堅世代には、「青黒さ」を求めている。それは、「青臭い」志と「腹黒い」戦略をあわせ持つことだ。高い理想と計算高さを両立させる「青黒さ」こそ、次世代リーターが活躍するための必須スキルだとしている。
ベテランの50代には貢献心を求めている。改めて顧客や組織、次世代への「お役立ち」に専心することだ。ひいては職位によらない自分への信頼を集め、人望となり、定年後に会社に頼らず生きていく自信にもつながるという。