「新入社員が自分で自分を鍛える時代です」
――ということは、新入社員は自分で自分を育てていかないとダメだということですか。
古屋さん「そうですね。成長したいと思う人ほど、本人があらゆる機会を活用して自分のキャリアを磨いていく必要があります。職場にある機会を最大限に利用しつつ、職場内外に目を向けて知見・経験を作っていくといいでしょう。
自分のアイデア、提案を職場で発信してみる。違う職場の『できる人』に会って話を聞いてみる。若手だけでチームを作って勉強会をすることもオススメです」
――そういえば、すでに報道されていますが、NTT東日本では若手が自主的に作った『0-DEN(おでん)』という、ゆるくつながる活動があります。NTTグループを横に串刺しして集まる勉強会です。1回のイベントに100人近く集まるほど盛況だと聞きます。トヨタ自動車にも『A‐1CONTEST』という若手の有志が集まってビジネスモデルの提案するコンテストを行っています。こういう活動を積極的に行うといいということですか。
古屋さん「企業にとってもこうした活動のよいところは、若手が自主的に行っている活動であるため、モチベーション高く、また企業が教えなくても若手が職業能力を高めてくれる点ですね。だから、会社も積極的にサポートしています」
――なるほど。双方にとってメリットがあるわけですね。
古屋さん「会社側も若手を過度に子ども扱いしてきたのかもしれませんね。中には職場の内外で頑張る若手を表彰させる場を設ける、若手だけのチームを作って成果をあげさせる方法をとるところも増えています。わかりやすい例では、飲食店をチェーン展開している企業でも、新人研修を兼ねて若手だけで営業を行う『研修センター店』が見られるようになりました。お客として行くと、若手ならではの工夫も感じられますし、接客も丁寧にしてくれて楽しいですよ」
――自分は「ゆるい職場」に入ったなあと思った新入社員は何から始めるべきでしょうか。
古屋さん「小さく始めてほしいと思います。若手から相談を受けると、自分のキャリアを輝かせるための『魔法の杖』があると思っている人がいますが、じつはそんなものはありません。キラキラしているように見える若手ほど身近なところから、一歩一歩アクションしていることに気づかされます。
上司に『自分は鍛えてもらっても大丈夫だから』というのは素敵ですね。そのひとことを新人が言える職場の風土を作ることができた会社も素晴らしいです。上司にそのひとことを言うことは、SNS映えはしないかもしれませんが、小さくて大きな一歩ですよね。これからのキャリアや職場の在り方は、働く個人一人ひとりの可能性や持ち味を引き出し花開かせることが求められていくと思います。
そのために、新入社員でも自分の希望を伝えてみること、会社や上司はそれが可能な風土や文化をつくることが大事だと思います。私も研究を通じて、新しい若手と職場の良い関係を考えていきたいです」
(福田和郎)