日用品大手、ライオンが2021年11月中旬、3日連続して年初来安値を更新した。
2021年1~9月期連結決算(国際会計基準)を11月5日に発表後、下落基調を抜け出せず、底値が見えづらくなっている。足元の原材料高が利益を圧迫するのではないか、との懸念が投資家に広がっている。大きく反転する材料にも乏しく、当面は年初来安値近辺で推移する可能性がある。
コスト削減が寄与、増収なのに......
まず11月5日発表の決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比2.1%増の2675億円、営業利益は33.4%減の254億円、最終利益は30.1%減の190億円。前期にコロナ禍で売れまくったハンドソープが今期はさほどでもない、原油高と円安による原材料高の影響を受ける、新工場の減価償却費も利益を押し下げる...... という要素により、21年12月期が減益ということは株式市場で広く認識されている。
そんなこともあって、直近の7~9月期(第3四半期)の営業利益(112億円、前年同期比8.0%減)は、発表直前の市場予想105億円を上回っている。
利益が市場予想を上回ったことについては、コロナワクチンの副反応対策として利益率の高い解熱鎮痛剤の販売が増えたことや、全体としてコスト削減を推し進めたことが寄与したようだ。売上高も824億円(1~3月期)、907億円(4~6月期)、943億円(7~9月期)と、「四半期を追うごとに増収しており好印象」(SMBC日興証券)とも受け止められた。
いつまで続く、不気味な原材料高
では、なぜ株価が上昇せず、11月16、17、18日と3日連続で年初来安値を更新し、18日終値が決算発表直前の5日終値と比べ、122円(6.6%)安の1736円となったのか――。
通期(2021年12月期)の業績予想を据え置いたことが一因のようだ。つまり、四半期を追うごとに増収し、第3四半期の営業利益が市場予想を上回っても業績予想を上方修正しないからには、原材料高の影響が、今後なお大きく続くと会社がみているのだろうとの連想が投資家に広がっているようなのだ。
大和証券は11月8日付のリポートで、「原材料高や償却増など来期業績には不安要素も」と指摘した。野村証券は11月9日付のリポートで目標株価を2200円から2150円に、わずかながら引き下げ、今回発表した決算の内容が「原料高による収益悪化懸念が残る結果となった」と記した。
もっとも、証券各社では、中長期的には成長を見込めるとの見方が多い。目標株価を引き下げた野村証券も「短期業績は厳しい」としつつ、「(歯磨き用品などの)国内オーラルケアと海外をけん引役とした中期成長の見方は不変」とし、むしろ「株価に割安感がある」とも主張している。
とはいえ、中長期の成長力を買おうとする投資家が多数派でないのは株価が示している。それだけ投資家が今の原油高、原材料高をいつまで続くか、わからない不気味なものととらえているのだろう。(ジャーナリスト 済田経夫)