11月は総務省の「テレワーク月間」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、一気にテレワークが浸透したが、新規感染者の減少とともに再び職場に通勤する人が増えてきた。しかし、テレワークの大きな流れは止まらないと見られる。今月は、テレワークや電話、コミュニケーションに関連する本を紹介しよう。
これまで対面が前提だった企業の採用試験の面接や説明会、OB・OG訪問が、コロナ禍ではパソコンやスマホを用いる形になった企業も少なくない。
本書「オンライン採用」は、そのデメリットだけではなく、オンライン採用のメリットを説いているのがユニークだ。自社にふさわしい採用を改めて構築するチャンスだというのだ。
「オンライン採用」(伊達洋駆著)日本能率協会マネジメントセンター
オンライン面接は選抜の精度が安定する
著者の伊達洋駆さんは、ビジネスリサーチラボ代表取締役。神戸大学大学院経営学研究科・博士前期課程修了。組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を行っている。
オンラインと対面との違いは3つあるという。1つめは対面からオンラインになることで、身振り手振りや表情、視線など「非言語的手がかり」が少なくなることだ。
2つめは技術や機器の問題が生じ、円滑なコミュニケーションが取りにくくなること。
3つめは「同期性」が減ることだ。メールやチャットなどの場合、回答が得られるまでタイムラグが生じる。
オンラインでの採用を進めると、企業側も候補者側も、「わかった感覚」が得られず、いつまでも不安がぬぐえない可能性があるという。このため、「非言語的手がかり」を得られる対面の機会を、採用プロセスのどこかに入れようとするはずだ。「リアルとオンラインの組み合わせをどうするか」は避けて通れない論点だと指摘している。
オンラインに対して「何かが足りない」とデメリットに目が向かいがちだが、伊達さんは、業態、業務内容、働き方など何も意識せずに、とにかく対面に戻そうとするのはもったいない、と書いている。
もっとも驚いたのは、オンライン面接のメリットとデメリットを論じた部分だ。ある研究によれば、「非言語的手がかり」が得られにくいオンライン面接での評価は、仕事のパフォーマンスや定着と相関しているという。オンライン面接の評価が高い人は、自社で活躍する人材である可能性が高いのだ。
その理由は、対面面接で無意識に発生しているバイアスが和らぎ、面接官は話す内容面に集中できるからだ。第一印象の強さ、能力より人柄、暗い人より明るい人、良い面より悪い面などのバイアスが緩和されるため、見極めの精度は安定する。
一方で、オンライン面接には、面接官のジャッジが「辛口」になりやすいデメリットがあるという。
今後の面接は、対面とオンラインのハイブリッドになると伊達さんは見ている。もしも対面とオンラインで違う評価が出たら、どちらの評価に重きを置くべきだろうか。それは対面だとしている。対面のほうがきちんと見極められている感覚が強く、これまでの慣れもあるからだ。対面の評価を優先させる傾向があることを知った上で、2つの評価を比べることを勧めている。