消費者の共感を集めて企業は拡大する
村上さんは地球を一つの株式会社と考える思考実験を通して、資本主義のあり方を考えた。今、資本主義の株式会社地球で起きていることは、企業ファイナンスで語るなら、不正会計、経営責任、訴訟という状況だという。
そして、サステナブル資本主義に必要な3つの視点とは、人がサステナブル、お金がサステナブル、すべてのステークホルダーがサステナブルということだ。人、お金、すべてのステークホルダーのそれぞれをサステナブルにするとは、より長期的に、より広い視点で価値やコストを自覚し、それを前提に未来を見据えて一人ひとりが行動していくことだ、と結論づける。
メルカリやLINE、Netflixなどの事例を紹介し、消費者や労働者の共感を集めることができれば、大きく拡大することができることを説明している。サステナブル資本主義は、ミッションを軸にした経営で、消費者と労働者の共感を買うための仕組みだからだ。
さらに今、世界で急拡大している「SaaS(Software as a Service)」などのサブスクリプション型のビジネスに言及している。このサービスの特徴は、技術的にソフトウェアであることや、クラウドを活用していることだけにとどまらない。一度契約してそのサービスを利用すると、徐々に機能が拡大され、使いやすいものになっていく。ユーザーが不満や改善点を指摘し、それを聞いた企業が改善することで、造り込まれていくのだ。
サービスやプロダクトに共感し、価値を感じた消費者が行う「考える消費」が投資家の資本を動かすのである。いくつかのSaaS企業の例を紹介し、ほんの少しの初期ユーザーの消費が、瞬く間に数十億円の資金調達を可能にし、その資金でさらなるユーザーの獲得や商品の開発が可能になる。今巨大化した米IT企業のGAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)もそのようにして拡大してきたという。
消費者が投資家マインドをはぐくむには、消費を投資だと考え、考える消費を行うこと、労働も投資と考えること、さらに余剰資金を投資することの3つの方法がある、としている。