「法律があるのに政府はなぜガソリン減税をしないのか」
一方、ほかのエコノミストたちからは「トリガー条項」の発動を求める意見が目立った。「トリガー条項」とは租税特別措置法第89条に基づき、「レギュラーガソリン1リットルあたりの価格が3か月連続して160円を超えた場合、ガソリン税の上乗せ分(旧暫定税率)25.1円の課税を停止し、その分だけ価格を下げる」というものだ。
J‐CASTニュース会社ウォッチでも、「えっ! 急騰中のガソリン価格を安くできる? エコノミストが指摘する『とっておきのカード』を政府が切らないワケ」(11月5日付)で取り上げた。
その中でも指摘しているが、岸田文雄政権は「トリガー条項を発動すると、ガソリンの買い控えの動きが加速し、返って経済が混乱する」として発動しない方針なのだ。
しかし、エコノミストのあいだでは、補助金よりもガソリンの減税のほうが効果ははるかに大きいという見方が強い。ヤフーニュースのヤフコメ欄には、こんな意見が相次いでいる。
エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏は、
「ガソリン価格の高騰は実質的に増税しているのと同じで、家計の可処分所得を目減りさせてしまう。ガソリン価格の高騰が続く間はガソリン税の暫定税率分(1リットル当たり25.1円)を一時停止にして、実質的に減税し、家計の可処分所得を下支えるべきではないか。
ガソリン税の暫定税率分を一時停止にすれば、1か月あたり約1000億円の税収減となる。仮に3か月間、一時停止とすれば約3000億円の税収減となる。ただ、2兆円もの財源を使って(緩い所得制限で)0?18歳の子どものいる世帯に10万円相当を給付するよりは、経済対策としての費用対効果ははるかに大きい」
と指摘した。
ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト、渡辺浩志氏も、
「これ(補助金)でガソリン価格が5円下がるわけではなく、効果は不透明です。ガソリンスタンドの減少で価格競争が不活発となったため、最近のガソリンは値上がりしやすく、値下がりしにくくなっています。政府の補助金は元売りや小売り業者の懐に入ってしまい、恩恵が消費者に届かない恐れがあります。
25.1円の上乗せ課税を停止するトリガー条項の発動のほうがわかりやすい策ですが、政府はこれを行わない方針。理由に『ガソリンの買い控えと反動による流通の混乱、国・地方の財政への多大な影響』を挙げています。しかし、クルマ社会の地方や灯油消費量が増える寒冷地の一般家庭はすでに困窮しており、即効性と透明性のある確実な対策を切望しています」
と、やはり「ガソリン減税」を求めたのだった。
(福田和郎)