日本は「おもてなしの国」と言われ、自分たちもそう思っている。ところが、「世界人助け指数」では、日本は126か国中107位。また「国は貧しい人々の面倒を見るべき」と答えたのは、イギリス91%、中国90%、韓国87%、アメリカ70%だったのに対し、日本は59%と、調査対象の中で最低だった。
本書「やさしくない国ニッポンの政治経済学」は、他人に対してやさしくない日本人の真相を歴史的、社会的な視線で探った本だ。副題は「日本人は困っている人を助けないのか」とさらに厳しい。
「やさしくない国ニッポンの政治経済学」(田中世紀著)講談社
日本人は困っている人を助けない
著者の田中世紀さんは、オランダ・フローニンゲン大学助教授。専門は政治学・国際関係論。冒頭の「世界人助け指数」は、イギリスのチャリティーズ・エイド財団が、全世界の130万人以上の人を対象に2009年から2018年まで行った調査の総合ランキングだ。全世界での最下位は中国で、台湾は48位、韓国は57位だが、日本は先進国では最下位だった。
日本は本当に「他人に対してやさしくない自助の国」になったのか、という疑問が本書の出発点だ。
一方で、一人あたり国内総生産は、先進国中(OECD加盟国)18位(2019年)に落ち込んでいる。厚労省の調査では、一世帯あたりの平均所得は552万3000円(同年)で、ピーク時の1994年の664万2000円から緩やかに減少している。所得が平均を下回る世帯が6割に及び、日本は「貧しい人が多い国」だとしている。
中間層が貧しくなっているなか、コロナ禍のいま、より多くの人が「貧しい人」のカテゴリーに入る可能性は否定できない。そのとき、誰も助けてくれなかったらどうなるのか、という問題意識が根底にある。
日本人が他人を思いやるというのは幻想ではないか――。社会心理学者・山岸俊男氏らの先行研究を紹介し、「日本人はお互いを信頼しない社会」であり、相互監視と制裁がない状態では、日本人は日本人同士で信頼し合えないという仮説は、他の社会学の研究ともつじつまが合うという。
集団に帰属し、集団のルールを守る限り、安定的な生活も保証されるが、集団のルールがなくなれば助け合いもなくなってしまうのだ。