2019年度の国民医療費は、前年度比2.3%増加した。
人口1人当たりの国民医療費も前年度から2.5%増加。高齢化が進む中で、医療費の増大が継続している状況が浮き彫りになった。
1人当たりの国民医療費、2019年度は35万1800円
厚生労働省は11月9日、2019年度の国民医療費の概況を発表した。国民医療費は44兆3895億円と前年度比9946億円(2.3%)増加、人口1人当たりの国民医療費も35万1800円と同8600円(2.5%)増加した=表1参照。
医療の医療費の全部または一部を国や地方自治体が負担する「公費負担医療給付分」は3兆2301億円で全体の7.3%、健康保険などの「医療保険等給付分」は20兆457億円で45.2%、「後期高齢者医療給付分」は15兆6596億円で35.3%、「患者等負担分」は5兆4540億円で12.3%となった。
前年度増減率では、公費負担医療給付分は1.7%増、医療保険等給付分は1.6%増、後期高齢者医療給付分は4.0%増、患者等負担分は0.9%の増となった。
高齢者(70歳以上)の医療費は医療保険分で6852億円と前年度比806億円(13.3%)増、国民健康保険分で3兆3159億円と同1779億円(5.7%)増となっている。
財源別でみると、公費が16兆9807億円で全体の38.3%を占める。このうち国庫は11兆2963億円で25.4%、地方自治体の負担は5兆6844億円で12.8%となっている。
健康保険料(社会保険、国民健康保険)は21兆9426億円で、全体の49.4%と50%近くを占めている。このうち事業主負担は9兆4594億円で21.3%、被保険者は12兆4832億円で28.1%となっている。
年齢階級別では、0歳から44歳は7兆7219億円で全体の17.4%、45~64歳は9兆6047億円で 21.6%、65歳以上が27兆629億円で61.0%と6割以上を占めている。
また、人口1人当たり国民医療費をみると、65歳未満は19万1900円、65歳以上は75万4200円となっており、高齢者医療の負担の大きさがわかる。
東京都、大阪府... 大都市ほど医療費負担は重い
年齢階級別国民医療費を性別にみると、男性では0歳から44歳が3兆7368億円で全体の17.4%、45~64歳5兆831億円で23.6%、65歳以上は12兆7271億円で59.1%に、女性では0歳から44歳が3兆9850億円で17.4%、45~64歳は4兆5216億円で19.8%、65歳以上は14兆3358億円で62.8%となっている。
平均寿命が男性に比べて女性のほうが長く、人口数が多いことも関係しているのだろうか、65歳以上の女性が最も医療費を使っている。
ただ、人口1人当たり国民医療費では、男性の65歳未満は19万2500円、65歳以上は81万5800円なのに対して、女性は65歳未満が19万1300円と男性と同水準だが、65歳以上は70万6700円と女性のほうが10万円以上も低くなっている。
では、都道府県別の国民医療費、人口1人当たり国民医療費ではどうなのか。患者の住所地を都道府県別にみると、東京都が4兆4571億円と最も高く、次いで大阪府が3兆3956億円、神奈川県が2兆8889億円となっている。
上位に入っている都道府県は大都市を抱えた人口の多いところであり、総額で上位にランクしている。これは、下位が鳥取県2050億円と最も低く、次いで島根県2677億円、福井県2733億円を見ても明らか。
一方で、人口1人当たり国民医療費をみると、上位では高知県が46万3700円と最も高く、次いで長崎県43万3600円、鹿児島県43万3400円となっている。これらの県は進行減少と高齢化が進んでいる県が多い。
下位をみると、千葉県が30万8500円と最も低く、次いで埼玉県31万900円、神奈川県31万4100円となっており、総額(国民医療費)で上位に入っている大都市を抱えた県でも、1人当たりでは下位となっている。
今回の国民医療費は2019年度のもので、新型コロナウイルスの感染拡大の影響はほとんど受けていない。コロナ禍の影響を受けた2020年度の国民医療費がどのように変化しているのか、注目される。(鷲尾香一)