世界史と日本史を結び付けて学ぶ
「週刊東洋経済」(2021年11月20日号)の特集は、「学び直しの『近現代史』」。来年春、高校の必修科目「歴史総合」がスタートする。世界史と日本史を結び付けて近現代史を学ぶのが特徴だ。グローバルな視点で歴史を理解することの重要性を説いている。
「世界史A」と「日本史A」を融合した「歴史総合」は、必修科目になる。その特徴は「近現代史」に絞り、近代化、国際秩序の変化や大衆化、グローバル化という3つの大きな枠組みを大項目にしていることだ。
人気ユーチューバー講師のムンディ(山崎圭一)氏が、教科書を読み解き、中国の近代化と日本の近代化を例に解説している。たとえば、中国のアヘン戦争、アロー戦争と日本へのペリー来航と改革、中国の太平天国の乱、洋務運動と日本の大政奉還・明治維新と自由民権運動がそれぞれ対比して記述されている。そして両国は日清戦争へと突入する。
また、世界の中での日本経済を学ぶというのも「グローバル化」の一例だ。日本の高度経済成長とドルショックやオイルショック、プラザ合意、バブル経済といった経済的な動きと、世界の動きとを並行的に扱っている。
「世界の事情を理解しつつ、日本の歴史を理解する」構成を評価しているが、教科書の分量が多いため、「詰め込み授業」が行われる可能性もあり、指導法が確立するまで、試行錯誤があるだろうと見ている。
ノンフィクション作家の保坂正康氏のインタビューも興味深い。「日本の近代史は14年周期で動いている」と指摘している。明確な理由は説明できないが、結果としてそうなっているという。
「日本人はとにかく一生懸命に目標に向かって走り続ける。そして、短期間で目標に達する。換言すれば、よいことも批判に値することも単位間でやってのける国民性ではないか。それで14~15年続けていると、内外でさまざまな事態が起きて別の局面に移る」という仮説を披露している。
その中でも特筆されるのが5.15事件だとしており、ファシズム体制確立の出発点になった、としている。今回のコロナ禍との共通性を感じるのは、可視化できる原因と結果について、時に感情ばかりを前面に出し、理性や知性とは無縁の態度を取ってしまうことだ、と指摘している。
「世界と日本の近現代史がわかる60冊」というブックガイドも重宝だ。「明治維新の意味」(北岡伸一著、新潮選書)、「日米戦争と戦後日本」(五百旗頭真著、講談社学術文庫)、「独ソ戦」(大木毅著、岩波新書)など、定評のある本を紹介している。
明治維新の死者が極めて少なかった理由を説明した、東京大学名誉教授の三谷博氏の「危機に備えた指導者たち」、日露戦争の勝因を鉄道利用に長けた日本と考える、慶応大学名誉教授の横手慎二氏らの寄稿も新鮮だ。
経済やビジネス以外のテーマを特集とする最近の「週刊東洋経済」は、じっくり読ませ、考えさせる内容が多い。今週号も保存版にふさわしい出来上がりになっている(渡辺淳悦)