「ガソリン値上げが重し、回復遅れる」
BNPバリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト(朝日新聞)は、
「設備投資の前期比3.8%減は、想像以上に悪い数字だった。供給制約の影響が大きい。半導体不足で自動車の製造が滞り、企業が仕事に使う自動車を購入できなかった。生産用機械向けの半導体も不足し、つくれない状況もあった。木材などの建設資材の不足や価格高騰も重なった。経済が回復している各国でインフレが進んで引き合いが強くなるなか、回復が遅れている日本では、輸入材の確保に苦労し、建設が滞る動きがあった。
半導体不足は底を脱したとみている。10~12月期の設備投資は持ち直すものの、不足の解消は徐々にしか進まないだろう。設備投資が好調だった4~6月期の金額の水準まで持ち直すには、今後半年はかかるのではないか」
と指摘。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎氏(ヤフコメ)は、
「事前の予想を大きく上回るマイナス幅となり、夏場の景気の落ち込みは思っていたよりも深かったことが示されました。最大の原因が個人消費(前期比年率4.5%減)の減少であり、背景にあるのが、感染第5波の拡大による夏場の対面型サービスの需要の落ち込みと、生産制約による自動車販売の減少です。
同期の米、EU、中国など主要各国と比べても最も厳しい結果となりました。これは、ワクチンの接種の遅れや、自動車産業への依存度が高いことへの弊害によるものだと思われます。
10~12月期は、対面型サービスを中心に個人消費が持ち直すことに加え、自動車の生産制約が徐々に解消することによってプラス成長に復帰することは確実です。ただし、感染再拡大への警戒感からリベンジ消費の勢いが弱いことや、エネルギー価格など物価上昇によって消費者マインドが悪化する懸念があることなどにより伸び悩む可能性があります」
とみている。
エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏(ヤフコメ)も、
「7~9月期は、新型コロナの第5波が全国的に猛威を振るっていた時期と重なり、緊急事態宣言発令に伴う行動制限の影響でGDPの過半を占める個人消費が低迷した。東京五輪も無観客開催となったことから事前に期待されていた経済効果はほとんど現れず、結果、実質GDPが大幅なマイナス成長になったとみられる。
10~12月期は、第5波収束に伴う行動制限の解除やワクチン普及による安心感の高まりで消費の回復が進むとみられるが、ガソリン代の値上がりなどが重しとなり、回復のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。岸田内閣が打ち出す40兆円規模の景気対策は即効性が期待できるものが少なく、効果が浸透してくるのは来年以降にずれ込む公算が大きい。GDPがコロナショック前の水準に戻るのは2022年以降になるとみられる」
と予想した。