世界では「異質」日銀のマイナス金利政策
金融市場はテーパリングまでは織り込み、その先にあるゼロ金利の解除、つまり利上げの行方を注視している。この点、FRBは慎重だ。ゼロ金利の維持を決めたが、今回のFOMCを終えて発表された声明で、従来「一時的」とみてきた物価上昇について「一時的と見込まれる」と表現を弱め、長期化する可能性を示唆したのは、物価上昇がしばらく続いても、利上げを急がないとの考えを市場に伝えたとみられている。
金融市場は今のところ、22年中に2回程度の利上げをするとの見方がコンセンサスだといわれる。テーパリングが順調に6月までに終わっても、直ちに利上げはせず、秋以降に物価や株式市場などの動向を見ながら判断していくということで、市場もこうしたFRBの姿勢を評価している。
ただ、物価が高騰を続ければ、インフレ抑制のため、利上げが早まる可能性があり、予断を許さない。
他方、米国の金融政策は世界経済に影響する。特に外国為替相場を通じて響く。FRBが大きな方向として利上げに向かっていけば、世界のお金は金利が高く、安定した通貨に向かいやすいので、基本的にドルが高くなる方向に作用する。
ドル高の裏返しとして自国通貨が安くなると、輸入品が値上がりしてインフレになるため、対抗して利上げを迫られる国が出てくる。ただ、利上げは景気を冷やす効果があるので、経済活動が落ち込み、失業が増えるなどのマイナスもあり、途上国を中心に難しい経済運営を迫られることになる。場合により、経済危機に陥る国も出かねず、それが世界経済を不安定化させる恐れもある。
その中で、日本は物価がなかなか上がらない状況が続き、日本銀行が続けるマイナス金利政策は世界でも特異になりつつあるが、ここにきて資源高と円安で企業物価は急上昇している。今のところこれによるコスト増が製品にどこまで転嫁され、消費者物価が上がっていくのか、不透明だが、日銀も難しい金融政策のかじ取りを迫られる。(ジャーナリスト 岸井雄作)