止まらぬインフレ 米消費者物価の上昇率は6%超!
金融緩和は市場にお金を溢れさせ、資金を借りやすくし、経済を活発化させる効果がある一方、物価上昇、ひいては資産バブルといった副作用をもたらす。
2008年のリーマン・ショックや、今回のコロナ禍など非常事態に世界の中央銀行が経済の落ち込みを回避しようと、利下げや量的緩和を進める。一度始めた緩和策は「麻薬」的な効果があるため、止めるのは容易でないのが一般的だ。
それでも、過度の副作用が生じないよう、経済状況をみながら、緩和の縮小・利上げに向けて慎重に政策の修正を各中央銀行は取り組むことになる。
現在の局面で、特に判断を難しくしているのがインフレの進展だ。FRBは消費者物価の上昇率の目標を2%としているが、ここ半年、毎月前年比5%以上上昇。10月は6.2%と1990年11月以来31年ぶりの6%台を記録している。これには、さまざまな要因が絡んでいるとされる。
コロナ禍で急激に景気が落ち込んだ2020年から、21年は欧米や中国を中心に感染の鎮静化で経済活動が活発化し、落ち込んだ需要の急回復で石油、液化天然ガス(LNG)、半導体など資源や物資の供給不足で物価が世界的に上昇しているのだ。
米国ではコロナ禍による労働市場の混乱もあって、人手不足が深刻化していて、たとえばトラック運転手が足りずに物流が滞り、物資や製品の不足に拍車をかけているといった問題もある。
物価は抑制したいが、引き締めが行き過ぎると経済を急激に冷やす恐れがある。特に今、株式市場は緩和マネーで高値を追い、11月8日の米ニューヨーク株式相場のダウ工業株30種平均は前週末終値比104ドル高の3万6432ドルと、史上最高値を更新。ところが、消費者物価指数が6.2%上昇したことを受けて、10日には240ドル下げるなど、やや神経質な動きになっている。
テーパリングは金融の緩和を徐々に止めていくので、すぐに金融を引き締めるものではないが、緩和の終わりの始まりではある。一般に、FRBが国債の購入を減らせば国債の利回りに上昇圧力がかかり、株式市場も下落圧力がかかりかねない。