「何を言いたいのか、わからない」
「言っている意味がわからない」
そんなことを言われた経験があると答えた社会人は、全体の6割以上といわれています。「説明が苦手」と自覚している人は潜在的に多いのでしょう。本書はビジネス数学のプロが教える「説明の方法がわかる」本です。
「ビジネス数学の第一人者が教える 史上最高にわかりやすい説明術」(深沢真太郎著)秀和システム
「理解できない」が生じる理由
どうすれば、「誰でも同じように理解できる内容」は作れるのでしょう。とても難しいことのように思うかもしれませんが、ポイントをつかめば簡単だと、本書の著者の深沢真太郎さんは言います。
「あなたが、これまでの人生で『わからない』が生じた機会を思い出してください。『ちょっと何を言っているかわからない』と率直に思った出来事です。なぜ『ちょっと何を言っているかわからない』だったのでしょうか。じつは、人間に『ちょっと何を言っているかわからない』と思わせる原因となるものが3つあります。
それは、(1)論理的でないとき(2)ピンとこないとき(3)知らない言葉があるとき、の3つです。(1)論理的でないというのは『つながっていない』ことです。たとえば『お腹が空いた。牛丼食べに行かない?』という文章は『お腹が空いた』と『牛丼食べに行かない』という2つの塊に分かれています。この塊はつながっています」
ところが、次のような流れのとき、どのように思うでしょうか。おそらく、「ちょっと何を言っているかわからない」となります。
「お腹が空いた。花柄のワンピース着たい」
「お腹が空いた。ガンダムのプラモデルがほしい」
これが、ちょっと何を言っているのかわからない! になるのです。
説明上手は「例」と「比喩」の使い方が上手
つぎに、(2)ピンとこないとき、を解説します。
「誰かの説明を聞いたときに『いまの話、ピンとこないなぁ』と感じたことが何度もあるでしょう。人間は、相手の伝える内容が論理的に正しくても、『ピンとこない』状態が生まれると理解までたどり着きません。まさに『ちょっと何を言っているかわからない』となります。その状態を解消するために用意するものが2つあります」
と、深沢さん。
「例(Example)を用意する、比喩(Metaphor)を用意する。説明上手な人は例外なく、この例と比喩の使い方が上手です」
・例(Example)を用意する
難しい事例をわかりやすく平易に置き換えると......。
→ 「あるある、そういうことが言いたいのね」
・比喩(Metaphor)を用意する
ボウリングはセンターピンを外してしまうと、すべてのピンが倒れることはありません。説明も、センターピンを外してしまうとなかなか伝わりません。
→ 「なるほど、まあ言うとおりだな。主張はよく理解できた」
(3)知らない言葉があるときにも、「ちょっと何を言っているかわからない」につながります。これは、誰もが実感していることでしょう。
伝わらない悲しさ、理解できない悲しさ
人間には感情があります。だからもし、あなたが説明した内容が相手に伝わらなければ、あなたはきっと悲しいはずです。こんなことはありませんか。
・プレゼンで主張したことが上司に納得してもらえなかった。
・採用面接で一生懸命アピールしたのに面接官には伝わっていなかった。
こんな出来事は、できれば避けたいものです。一方で、説明する相手にも、感情があります。理解できない悲しさです。
・部下があのプレゼンで何を言いたかったのか理解できなかった。
・一生懸命さは伝わるが、何をアピールしたかったのかがわからなかった。
あなたがする説明の相手は、その内容を理解したいと思って聞いてくれているかもしれません。だとすると、あなたの説明を聞いても理解できなかったという事実は、その人にとってとても悲しいことであり、これもまた、できれば避けたいものです。
「わかった」「できた」「解けた」という経験は、気持ちのいい感情です。「わからない」は不快ですが、裏を返せば「わかった」は快感です。もし、説明や理解することに苦手意識を持っているなら、この機会に改善してみませんか。
(尾藤克之)