成長のドライバー
この一連の事業ポートフォリオ再構築は一定の成功がみられるもの、今後の課題はグループシナジーだろう。現時点でも、一部でノウハウ共有・人材交流・部材供給などはあるものの、十分なシナジー効果とは言い難い。また、石炭事業で創業し、長年の歴史があるからこそ今後どのような事業を軸に成長シナリオを描いているのか不明瞭だ。この点、産経新聞の取材に、吉岡社長は「今はイメージを固める段階ではない。何の会社かを掲げることが大事ではなく、各事業分野で頭一つ飛び抜けている会社を集め、単独では目立たなくても、どれかがなくなっても日本が困る、プロフェッショナルな企業の集合体としたい。ホールディングスとしては、そのグループ経営のプロでありたい。」としている。
ただ、投資ファンドではない以上、今後のシナジーと成長ビジョンを投資家にいかに伝え、コングロマリット・ディスカウントに向き合うかが問われそうだ。
参考リンク:「石炭事業撤退も選択肢 吉岡泰士・三井松島HD社長」産経新聞2021年8月16日付)直近の石炭市況と会社の事業拡大・再編をあわせて、考えたい。石炭市況は急騰後、足元では急落などボラティリティの高い状態が続いているが、歴史的には高値圏にあり、業績に対する市場の期待の高さが株価の動向をみればわかる。
気象庁エルニーニョ監視速報(2021年10月11日付)によれば、「ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつある」ともされ、天気の変動に注意が必要だ。寒波が到来した場合、電力高騰化で次々新電力倒産したことで記憶にも新しいが、パイプラインの設置が難しい島国である日本にとっては安定的なエネルギー源確保が課題だ。
LNGなど他のエネルギーは備蓄能力には限界があるため、石炭が再度脚光を浴びることも予想される。冬を越しても、脱炭素と安全保障の構造そのものが足元の価格高騰化を招いていることを鑑みれば、長期化の可能性がないわけでもない。
ただし、石炭消費の縮小は再エネ拡大などで今後ますます進み、この市況は一過性というのが主なシナリオだろう。一過性であれ、今般の石炭市況で上振れた利益を成長投資に生かすことこそが成長のドライバーであり、前出の元お笑い芸人で著名個人投資家の井村俊哉氏の期待するところなのではないか。