「60歳以上でもデジタルの学び直しに挑戦する人は多い」
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、「スマホのことを職場の若い人に聞いただけなのに」という女性の投稿をめぐる論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――今回の「スマホのことを聞いただけなのに」という投稿をめぐる大反響を読まれて、率直にどのような感想を持たれましたか。
川上敬太郎さん「投稿者さんとしては決して悪気があるわけではない。ただスマホを使えるようになるために少し教えて欲しいだけという気持ちなのだと思います。しかし、聞かれる側の同僚はまったく別の印象を受けているのではないでしょうか。 スマホの使い方を聞かれる側は、投稿者さんが思われている以上に負担を感じています。投稿者さんご自身が、スマホの使い方を理解していないために、聞かれる側の負担の度合いについてピンときていないように感じます」
――論争の背景には、投稿者のようにデジタルに弱くてスマホを使いこなせない、いわゆる「情報弱者」の問題があると思いますが、川上さんが研究顧問をされている、働く主婦層の実情を探る調査機関『しゅふJOB総研』で、「情報弱者」のことを調べたことがありますか。
川上さん「しゅふJOB総研と理系学生採用支援を行う株式会社テックオーシャンと共同で、『DXと人材』に関する調査を行ったことがあります。
◆【DXに関する意識調査】主婦層と国立大理系学生の比較
主婦層と国立大理系学生それぞれに、『あなたはDX人材になれると思いますか?』と質問したところ、主婦層は『思う』が10%、『思わない』が32%だったのに対し、国立大理系学生は『思う』が29%と主婦層の3倍、『思わない』は16%で主婦層の約半分でした。
主婦層は、『DXの名前も内容も知らない』という人が6割以上で、デジタル周りの情報に対する関心や知識、自信の低さが表れているように思います。フリーコメントでも『何のことだかさっぱりわからない』『興味がない』という人が目立ちました。
しかし、60歳代でも『年齢に関係なく前向きに挑戦したい』『自分はアナログ人間だが、デジタルに適応できる人は憧れです。学び直しをしたい』という人がいました。人それぞれなのだと思います」
――回答者たちの意見は投稿者の批判ばかりで、擁護する人は皆無です。過去に取り上げた論争では、多少なりとも投稿者の理解者がいましたから、これほどの一方的なバッシングは珍しいです。投稿者のしたことはそれほど断罪されるべき内容でしょうか。ちょっと「情報弱者ハラスメント」さえ感じられますが。
川上さん「投稿者さんご自身が、同僚に負担をかけていることに対して無自覚であることが、擁護者がいない大きな原因ではないかと感じます。ただ、投稿者さんからは悪意を感じません。無邪気と言うと語弊があるのかもしれませんが、無自覚な行為で責められてしまう状況は投稿者さんご自身にも理解しがたく、『情報弱者いじめ』のような印象になっている面もあると感じます。
しかし、それは元を正すと、投稿者さんがスマホに疎いことが原因というよりは、コミュニケーションの取り方に起因する部分が大きいように思います」