〈後編〉では、〈前編〉で進めてきた「メンバー育成計画シート」に基づく部下との面談プロセスを踏まえ、さらに動機づけを強化する方法を解説していきます。
将来への希望と期待をすり合わせる
■将来への希望を聴き、期待を語り、共有する
シートの最終項目は、上司の部下に対する「将来への期待」です。これまでの対話を通して、部下の今後の仕事への希望や自己啓発の課題などが、より明らかになってきたことでしょう。そこで部下の意向を十分に踏まえながら、上司としての期待を整理し、しっかりと伝えることが大切です。
今後3年~5年の将来を見据えて、部下にどのように成長し活躍をしてほしいのか。その一環として、当面どのような役割・仕事を任せ、どのような期待を持っているか。それに応じて、上司自身がいかにフォローをしていくか。日常や定期的な報連相の方法や、部下の自己啓発への支援なども含めて、上司としての関り方も明らかにしておきましょう。
部下との対話では、すべてが完全に一致し同意できる内容ばかりではないでしょう。そうした認識のズレについても、上司として自覚しておくことが必要です。そのうえで、そのズレをいかに前向きに解消していくか。部下に粘り強く働きかけていく事柄や、互いに調整や努力をし合う点は何か。また上司自らが改善し変わらなければならない点もあるでしょう。
部下からも学び、共に自分も育つ「共育」の視点も大切にして、上司自身の内省を深めることにも留意しましょう。
「あなたならでは」の役割・仕事に動機づける
■チームの中での役割・仕事の位置づけを明らかにする
こうしたプロセスを経て、部下に任せたい役割・仕事を明らかにしたら、それが組織・チームの中でどのような位置づけになるかを言語化し、本人とチーム全体で共有することも大切です。
例示した「中堅広告代理店 営業組織の仮想例」を参照してください。このような個性とウィットのある組織図を作成し共有することも効果的ですが、ここではチーム全体に各メンバーを位置付ける意義とポイントを確認します。
「仮想例」の中の面談相手の部下は、営業第二課の11年目の目標の中に位置づけ動機づけると同時に、本人のキャリア希望に根差した自分らしい意義ある役割・仕事として、またチームの期待を背負ったものとして動機づけるのです。
そのことで、部下一人ひとりの活躍・成長と組織の成長が繋がり、主体的・自律的に遂行する姿勢が芽生えていきます。それがすなわち仕事の責任の明確化となるのです。(前川孝雄)
※マネジメント改革を実現する「上司力」の詳細をさらに詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。