「中国の3大危機」を週刊エコノミストが特集
「週刊エコノミスト」(2021年11月16日号)の特集は、「世界を襲う 中国3大危機」。不動産、新興IT企業規制、電力不足という3つの危機の現状をレポートしている。
ジャーナリストの高口康太氏と編集部の村田晋一郎記者による巻頭レポートが、深刻さを裏付ける。広東省深?市に現地法人があるJENESIS(ジェネシス)では、生産ラインの電気だけは確保したが、オフィスや廊下は照明もエアコンも止めたという。
節電要請が送られ、使用電力の数値目標を少しでもオーバーすれば電力を止めるという厳しいものだった。脱炭素推進の中国流の取り組みとの見方もあるが、かなり強引だ。
デフォルト(債務不履行)が懸念される不動産大手、中国・恒大集団が手掛けるマンションの建設工事が止まり、各地でゴーストタウンのような光景が広がっているという。今年に入って不動産業者のデフォルトが相次いでいるが、中国政府も安易に救済するわけにはいかない。
恒大集団の創業者、許家印会長の香港にある豪邸は抵当に入ったと現地メディアが報じた。巨額の債務返済のため、中国当局から個人資産も処分するよう促されたもようだ、と書いている。
中国政府は、独占禁止法などを駆使して、ネットサービス大手のテンセントなどIT企業への統制を強めている。ハイテク企業の株価は大幅に下がり、海外投資家から厳しい目が向けられている。
11月8~10日に開かれる共産党第19期中央委員会第6回総会(6中全会)では毛沢東、鄧小平時代に続く第3回目の「歴史決議」が行われるという触れ込みだが、佐々木智弘・防衛大学校教授は「共産党の100年の成果と習近平政権の成果をたたえる内容を超えるものではないだろう」と見ている。
共産党一党支配をより強固にするため格差是正に取り組み始めたが、既得権益層の抵抗を招きかねない危うさがあり、危機感を持って6中全会に臨んでいるようだ。
習近平政権が最近よく使う「共同富裕」というキーワードだが、一部の富裕層への富の集中は日本以上だという、三尾幸吉郎・ニッセイ基礎研究所上席研究員の指摘に驚いた。上位1%の富裕層が得ている所得は13.9%に達し、米国の20.5%ほどではないが、日本・欧州各国を上回っているのだ。
これを是正しようとする動きが、経済にどう影響を与えるのか注目される。
(渡辺淳悦)