「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
「週刊ダイヤモンド」(2021年11月13日号)は、「三井 住友 名門『財閥』の野望」と題して、日本を代表する二大財閥、三井と住友を比較した特集を組んでいる。
銀行、損保、建設、信託と、三井と住友は一定の分野で融合が進んだが、化学や商社、不動産などでは今でも激しく競合する不思議な関係にある。
銀行の合併から20年。2つの企業グループの実力を検証している。
三井住友FGの取締役は住友系ばかりに
2001年に旧住友銀行と三井系の旧さくら銀行が合併し、三井住友銀行が誕生した。「相克」と「融和」の歴史を振り返り、「野武士」が「公家」を20年でのみ込んだ、と総括している。
住友とさくらの合併比率は10対6。対等合併だが、住友が優位だった。合併協議で、さくら銀行側は、住友銀行が採用していたNECの勘定系システムへの全面移行を提案した。「融和」の始まりだった。
2代目頭取の奥正之(住友出身)は融和路線を継承し、旧三井の「プリンス」たちを排除しなかった。そこにはトヨタ自動車と三井との太いパイプがあったという見方を紹介している。かつて住友が融資を引き上げたため、トヨタとの取引が断絶していたからだ。
後に東芝社長となる車谷暢昭副頭取(三井出身)が去り、頭取ポストをめぐる三井と住友の確執は消えたという。銀行とフィナンシャルグループ(FG)で三井と住友のたすき掛けが行われてきたトップ人事も崩れ、今年初めてFGの取締役全員が住友出身者になった。
トップ人事だけを見れば、住友が三井をのみ込んだ20年だったといえる。だが、別の見方も紹介している。大阪発祥でアグレッシブな、かつての住友銀行の面影はなく、2019年にはリテール部門での個人ノルマを廃止した。メガバンクを支える海外事業では、モーレツ営業は通用しないため、おっとりとした三井の行風に変異したというのだ。
三井出身の大島眞彦FG社長が次期頭取レースの本命候補に挙がっているなど、異変もあるという。「実力本位で人事の9割を判断している」という國部毅FG会長のインタビューも掲載。銀行の姿も変わり、「環境に適応できる者が残る」というダーウィンの進化論を引用した言葉を紹介している。
メガバンクの傘下入りを拒絶して信託同士で経営統合を果たした三井住友信託銀行。損保では三井海上と住友海上が合併したが、生保では再編が進まなかった事情など、それぞれ銀行とは異なる論理があったようだ。
パート2では、経団連など財界の要職に住友グループの企業経営者が多いが、中核企業の社長が毎月集まる「白水会」には「暗黙の統治」というべき、住友独自のガバナンス機能があることや、三井グループの緩やかな連携を取り上げている。
銀行が合併したからといっても三井と住友が激しく競合している、商社、不動産、重工業、化学、電機の5業界の近況をパート3でまとめている。
第2特集の「ビール蒸発」も興味深かった。新型コロナの緊急事態宣言が解除されても、ビールメーカーに楽観ムードはないというのだ。飲食店の淘汰が進み、業務用市場で打撃を受けるとともに、業務用酒類卸の再編で値下げ圧力がかかるという2つの「時限爆弾」を抱えているという。
評者も「家飲み」が続くうちに、よりアルコール度数の低い「微アル」(0.5%)やノンアルの商品を多く買うようになった。新型コロナの新規感染者数が減ったとは言え、「外飲み」への抵抗感はまだ強く、忘年会を自粛する動きもある。ジリ貧の国内市場を挽回しようと海外事業に活路を見出そうとしているが、明暗が分かれるキリンとアサヒの現状をレポートしている。