部下一人ひとりが主体的に働くようになるマネジメントの起点「責任の明確化」〈前編〉(前川孝雄)

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   リモート下で求められる「支援型マネジメント」を進める第一歩は、部下の仕事の「責任の明確化」です。

   ただし、「管理型マネジメント」にありがちな、部下に対し一方的に仕事を付与し、目標を示し、仕事ぶりを監視し、結果を評価する方法では逆効果です。部下の自律性を引き出し、部下が仕事に目的や意義を感じ、自ら主体的に責任を引き受けようとするように、丁寧な対話と動機づけをしていくことが大切です。

  • 「支援型マネジメント」は丁寧な動機づけから…… (写真はイメージ)
    「支援型マネジメント」は丁寧な動機づけから…… (写真はイメージ)
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部下のキャリアに寄り添い思いを聴く

   そこで、年度の仕事開始の期初に部下との面談を行い、本人の仕事への思いやキャリア志向、また強み、弱みなどへの理解に努めます。そのうえで、仕事の目的や意義を共有しながら、本人に任せる役割・仕事をしっかり決めていきます。

   面談は部下1人1時間程度で、上司はシートを手元に置き肯定的な姿勢で傾聴していきます。私が開発した「メンバー育成計画シート」を図示しますので、活用するとやりやすいでしょう。

■部下のキャリアヒストリーを概観する

   「メンバー育成計画シート」の左側一列は、部下のキャリアヒストリーを整理する部分です。部下との面談に先立ち、分かる範囲で本人の社歴(+転職暦)や現在の担当業務、そして将来のキャリア展望などを整理し記入しておきます。面談では、それらを確認・補強する形で本人の話を聴いていきます。

   担当業務で本人の将来につながると思える部分は、詳しく聴きましょう。本人の将来のキャリア希望も確認しておきます。

■会社への思い、現在の仕事への思いを聴く

   シート右側・上段では、まず部下が会社に対して感じている満足感や充実感、また反対に不満や悩みを聴き取ります。ポジティブな感想や意見は話しやすく、ネガティブな内容は話しづらいものです。率直な思いを語れるような雰囲気づくりを工夫しましょう。

   次いで、現在の自分自身の仕事・役割についての思いも、上記同様に両面で聴き取ります。満足要因と不満・悩みの要因については、無理のない範囲で聞いておくことが、本人理解に役立ちます。

部下の持ち味を知り、「強み」と「弱み」を共有する

■「強み」を十分認め、「弱み」をフォローする

   以上を踏まえて、シート右側・中段の本人の「強み」(長所)と「弱み」(短所)について対話を進めます。上司が感じている内容はあらかじめ記入しておきます。

   部下からすれば、いきなり「あなたの強みは?(弱みは?)」と尋ねられても答えに窮します。そこで、まず本人の「持ち味」に着目しましょう。これまで自分で成果が上がったと思う仕事や、好きな仕事は何か、反対に苦手は何かなどの話題から入り、対話を深めます。本人の持ち味への光の当て方によって、強みや弱みが浮かび上がってくると考えるとよいでしょう。

   ここでは、まず部下本人が自覚する強みと弱みは何か、自己認識を開示させることが第一です。そのうえで、上司としての評価も伝え、双方の認識や思いをすり合わせていきます。本人が気づいていない強みは具体的に伝えて、励まします。また弱みについては、往々にして強みと表裏一体であることも多いので、個性でもある旨を伝えると、前向きに捉えることができます。

   部下の強みはさらに伸ばし、弱みは本人の努力と上司・同僚の協力で補強していく姿勢が、「支援型マネジメント」の原則です。すでに面談での対話から、部下への動機づけがスタートしています。部下自身の思いや自己認識の傾聴に努めながらも、適切なアドバイスや励ましによって、上司と部下の信頼関係の基礎をつくっていくことが大切です。

   次回の〈後編〉では、こうした面談プロセスを踏まえ、上司からの将来への期待と本人の希望をすり合わせながら、いかにチームの一員として前向きな動機づけを図るか、解説していきます。(前川孝雄)

※マネジメント改革を実現する「上司力」の詳細をさらに詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力〜『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。

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