工場よりもサテライトオフィスの誘致を
森本さんは、「工場誘致」から「サテライトオフィス誘致」へ考え方の転換を、と訴えている。一企業の単独の拠点、さまざまな企業が入るシェア・オフィスなど、サテライトオフィスは、製造業の工場や倉庫を誘致する場合に比べ、コストがかなり低く抑えられる。また、人口減少や経済活動の縮小などで空いた建物や、休眠施設などをオフィスに転用することもできる。
新型コロナウイルスの感染拡大とともに、比較的感染が少ない地方で仕事をしたいという企業人と誘致をしたい地方自治体の思惑が一致し、さまざまなところで地方のサテライトオフィスは実現している。Uターン、Iターンによる人口増も期待されている。
本書では、クラウドサービスを提供する米系企業、セールフォース・ドットコムが、和歌山県白浜町につくった「白浜町ITビジネスオフィス」を紹介している。2015年に開設、移住したメンバーのほか、3か月程度で東京に戻るローテーションを組んでいる。東京に比べ、案件発掘数が20%も高いなど生産性も上がったという。自由な時間が増えたため、地元で社会貢献活動をすることが、いい循環を生んでいる、と同社では見ている。
このほかに福井県鯖江市、大阪府大阪狭山市、秋田県大館市などの取り組みを紹介している。テレワークは大都市の企業を対象にしたものを思っていたが、その受け皿は地方でもいい。いや、地方の方が日本全体のためには効果がある、と本書を読んで痛感した。
まさに、「あなたのいるところが仕事場になる」のである。(渡辺淳悦)
「あなたのいるところが仕事場になる」
森本登志男著
大和書房
1870円(税込)