ズルズルと際限なく働いてしまう環境が広がっている
翻って日本はというと、議論が進んでいるとは言いがたい状況だ。
その理由について、労働問題に詳しい専門家の中には、
「そもそも公私を切り分けるのが難しいという文化的な背景がある。特に中高年者の中には『会社は家族と同じ』という見方もあり、勤務時間外の接触を禁止するような立法化の話まで進みにくい」
という指摘もある。
一方、企業の中には社員の心身の健康を守るため、「つながらない権利」を行使できるよう、さまざまな取り組みも始まっている。
夜間や休日はメールの送受信を禁止する企業もあるほか、休日にメールを送ろうとするとパソコン上に注意を促す表示を出すような工夫をするケースもある。
通信技術の発達で、自宅だけでなく、旅先で仕事をする「ワーケーション」を活用する人も目立ってきている。労働者の自由度が増しているように見えるが、注意しなければズルズルと際限なく働いてしまう環境が広がっているとも言える。
「働く人を守るには、何らかのルールを整備しないといけない」と危機感を抱く専門家は多く、「つながらない権利」をめぐる議論が活発化しそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)