キャッシュレスの次はカードレス! 「おさいふケータイ」で先行していたはずが...... 立ち行かない日本勢の姿

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   現金の代わりにカードやスマートフォンで支払うキャッシュレスは、10%への消費税率引き上げに伴う政府の促進策に加え、2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大で認識された衛生上の理由から一気に加速した。

   さらに現在進んでいるのは、カードさえもスマホやスマートウオッチに取り込んでしまうカードレスだ。その背景には米巨大IT企業の強さと、立ちゆかない日本勢の姿が垣間見えてくる。

  • スマホで買い物が当たり前の時代になった(写真はイメージ)
    スマホで買い物が当たり前の時代になった(写真はイメージ)
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アップルペイなら、一つのアプリで複数の電子マネーが使える

   流通系の電子マネー「WAON(ワオン)」と「nanaco(ナナコ)」が2021年10月21日、米アップルの決済サービス「アップルペイ」で利用できるようになった。

   ワオンは流通大手のイオングループが提供しており、イオン系のスーパーやコンビニなどで利用できる。ナナコは同じく流通大手のセブン&アイ・ホールディングスによる電子マネーで、セブン-イレブンやイトーヨーカドーなどで使える。

   これまでも電子マネーをスマホで使うサービスは、それぞれの発行主体が別々に提供していた。アップルペイが斬新だったのは、一つのスマホアプリで複数の種類の電子マネーなどを使えるようにしたことだ。アップルペイから電子マネーを選んで、スマホやスマートウオッチを店舗の読み取り機にかざせば、支払い手続きが完了する仕組みだ。

   日本国内ではアップルペイのサービスは2016年に始まり、当初からJR東日本の電子マネー「Suica(スイカ)」に対応している。20年10月からは同じ交通系電子マネーの「PASMO(パスモ)」にも対応を始めており、駅の自動改札機にスマホをかざして出入場する人の姿も目立つようになった。電子マネーでは「iD」や「QUICPay(クイックペイ)」が先行して対応しており、流通2強が提供するワオンとナナコが加わることで、利用者数の上積みが見込まれる。

   さらに追い風になっているのは、クレジットカード各社の非接触決済が出そろったことだ。これによりクレジットカードもアップルペイに登録できるようになり、マスターカードやJCB、アメリカン・エキスプレスに加えて、2021年5月からはVISAのタッチ決済も対応している。

アップルペイが主導権 「規格を握る者が市場を有利に動かす」

   こうしたアップルペイを利用できるのは、アップルが手掛けるiPhone(アイフォーン)やアップルウオッチといったアップル製品に限られている。

   アップルペイの利便性が向上すれば、ライバルのアンドロイド搭載スマホとの競争をアップル側が有利に展開することにつながる。アップルペイがさまざまなサービスの入り口となれば、アップルペイの利用者が増えるほど、そのサービスの利用者も増えることになる。

   そもそも、キャッシュレスやカードレスの非接触型決済に使われる技術「フェリカ」を開発したのは、ソニー(現ソニーグループ)だ。フェリカを搭載した携帯端末を使って複数の電子マネーをまとめて利用できる「おサイフケータイ」を開発したのはNTTドコモであり、2004年からサービスを提供している。

   こうして日本勢は先行していたものの、「おサイフケータイ」は鳴かず飛ばずで、機能が似たアップルペイがカードレス決済の主導権を握った。スマホのOS(基本ソフト)でわかるように、規格を握る者が市場を有利に動かせる。

   アップルペイの隆盛からは、さまざまなサービスを取り込んで巨大化する米IT企業の強さを改めて思い知らされる。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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