1万6000円~2万円も家計が助かるのに
今回の原油価格急騰の事態に、「トリガー条項を発動するべきだ」と主張するエコノミストは少なくない。
日本経済新聞(11月5日付)「OPECプラス、追加増産を見送り 日米の要請応じず」という記事につく専門家のミニ解説コーナー「Think!」では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、こうコメントを寄せている。
「いよいよ、ガソリンに課せられる揮発油税や地方揮発油税、軽油引取税の引き下げを通じて家計や企業の税負担軽減となるトリガー条項の発動が求められる状況になってきましたね。仮に1年間発動されたと仮定すれば、これらの減税効果を通じて年間の家計と企業の税負担をそれぞれマイナス0.7兆円、マイナス0.8兆円以上軽減する計算になります。 家計の世帯あたりに換算すれば、平均的な負担減はマイナス1.3万円に達し、特に北陸や東北、四国、東海地方では平均的な自動車関連支出が高いことから、負担減はマイナス2.0万円~マイナス1.6万円前後になります。トリガー条項の発動は、短期的な地方経済活性化策として検討に値する効果があるといえるでしょう」
また、ヤフーニュースのヤフコメ欄では、ソニーフィナンシャルグループ・シニアエコノミストの渡辺浩志氏が、こう指摘した。
「原油高と円安による輸入原油の高騰がガソリン高に波及しています。世界的な経済活動の再開で原油需要が急回復する一方、供給能力は脱炭素化に向けた産油国の投資抑制によって低下しており、需給逼迫が原油を急騰させています。ただし、米エネルギー情報局によれば、世界の原油需給は来年(2022年)3月頃に逆転し、供給超過になる見込みです。先物市場は1年先の原油価格が1バレル=70ドル程度と今より10ドルほど値下がりすると予想しています。
このとおりになればガソリン価格は150円を下回ることになります。もっとも、グリーンフレーション(編集部注:脱炭素に向けた動きを表す『Green=グリーン』と、継続的に物価が上昇する『Inflation=インフレーション』を重ね合わせた造語。環境に配慮した動きは、エネルギー価格の高騰を招き、インフレ懸念につながるという意味)は構造的であり、原油価格が先物市場の予想どおりに下がるとは限りません。また、さらなる円安進行もあり得ます。
ガソリン価格はもう一段上昇した後、高止まりする可能性が高そうです。トリガー条項の復活で25.1円の上乗せ課税を凍結するなど、天然ガスが高騰する欧州で行われているような家庭への燃料費補助が必要になりそうです」