総合人事・人財サービスのアデコ(東京都千代田区)が、管理職を対象にした「副業・複業に関する調査 2021年」(9月9日~13日)を実施したところ、コロナ禍を経た直近3年で「副業・複業」を認める企業は15ポイント増えて、37.2%となった。10月28日の発表。一方で、半数以上がいまだに「副業・複業」認めていない。
調査の対象は、上場企業に勤務する30代から50代の管理職(部長職・課長職)510人。この調査は2018年に同条件の対象者に実施しており、経年による意識の変化についても比較分析している。
コロナ禍で働き方の「多様性」が高まった
調査によると、上場企業の管理職に「副業・複業が認められているか」を聞いたところ、「認めており、推進している」が8.0%、「認めている」は29.2%で、合わせて37.2%の企業で認められていることがわかった。
これは2018年の22.8%よりも14.4ポイント高い数値で、企業の「副業・複業」に対する許容度が3年間で高まったことがわかった。その一方で、「禁止している」と答えた企業は51.8%で、依然として半数以上が禁止している=下の図1参照。
また、「認めており、推進している」または「認めている」と答えた190人を対象に、認められた時期について聞いたところ、2020年1月以降が53.2%となり、コロナ禍の影響によって働き方の多様性が高まったことで、「副業・複業」への許容度が高まったとみられる。
「2018年の調査では、『副業』=副収入を得るための仕事というイメージが強く、企業としても従業員の長時間労働に対する懸念から許容する企業が22.8%にとどまっていましたが、この3年間に37.2%に増えていることがわかりました」
と、アデコの取締役・ピープルバリュー本部長、土屋恵子さんは言う。
コロナ禍で在宅勤務が進むなど働く環境の変化で、いわゆる「空き時間」を活用する場面が増えてきた様子がうかがえる。
副業を認める理由「社員のスキルアップにつながる」
さらに、勤務先で自社の社員に対する副業・複業を「認めており、推進している」、「認めている」と回答した管理職190人に、「副業・複業が認められている理由」を聞くと、「本人のスキルアップにつながるから」が1位。2位には「イノベーションや新規事業の創出につながるから」が34.2%で続いた。
2位のイノベーションの促進は、2018年では6位に位置しており、もっとも順位の上昇が大きな項目となった。一方、18年に41.4%だった「特に禁止する理由がないから」は、21年には28.9%と大きく下げた。18年と比べて21年は、より長期的な視点によるメリットが上昇傾向にあり、副業・複業に対する期待感にも変化が表れてきたことがうかがえる=下の図2参照。
その一方で、将来的に社員に副業・複業を認めることを検討している企業は、2割以下にとどまっている。副業・複業を「禁止している」と答えた管理職338人に、「勤務先では、自社の社員に副業・複業を将来的に認めることを検討しているか」と質問したところ、「認める方向で検討中」が2.7%、「一定の懸念が解消されれば、認めることを検討する」が14.4%で、「検討している」と回答した人は合わせて17.1%にとどまった。
広がる!?「副業・複業」は新たな労働スタイル
また、調査で管理職510人に対して、「勤務先で、他社や個人事業主としての仕事が本業の労働者を受け入れているか」と聞いたところ、「すでに受け入れている」と答えた人は24.2%だった。半数以上の人が「受け入れる予定がない」と答えている。
「すでに受け入れている」との答えは2018年に22.6%で、企業が「副業・複業」を行っている労働者に対する受入れ度にはあまり変化がなかったことがわかった。アデコは「副業・複業」が今後より推進されるためには、企業の許可だけではなく労働者を受け入れる企業の採用の柔軟性も必要になると考察される、とみている。
ただ、「今後、日本では副業・複業が広がると思うか」との問いには、29.4%の人が「広がると思う」と回答。「どちらかというと広がると思う」が43.5%で、合わせて7割以上の人が「副業・複業」という新たな労働スタイルが、国内でも広がっていくことを予想していることがわかった。
アデコの土屋恵子さんは、
「全体を俯瞰してみると、許可していない企業が半数以上あることや『副業・複業』を行っている人の雇用に消極的な企業の姿勢がみられます。ただ、今回の調査で『副業・複業』という働き方を認める企業では、その理由に『社員のスキルアップになる』『イノベーションや新規事業の創出につながる』をあげるなど、管理職の意識に大きな変化があったことがわかりました。副業・複業を通じて、一つの企業では得ることができないキャリアや経験を獲得することが可能となり、人生100年時代を生き抜く自律的なキャリアの構築にも役立ちます。企業は、柔軟な働き方や組織のあり方について、いっそう理解を深めることが必要になっています」
と指摘している。