いまや芸人も「コンプラ」を口にする時代
戦後日本は大企業を中心として高度成長という類まれな発展を遂げることで、敗戦国の悲惨な状況から見事なまでの復活を遂げました。従い、これをけん引してきた大企業の思想や方針は、長らく常に正しいものとして世間からも受け止められてきたわけなのです。
ところが、昭和の終焉と時同じくしてやってきた高度成長の延長線にあったバブル経済の崩壊により、日本の経済環境は一変します。高度成長は一転、低成長に姿を変え、証券市場の国際化や海外に生産拠点や販売網を広げ国際的な取引をする企業の激増によって、産業界にはグローバルスタンダードという考え方が当たり前のように入り込んできたのです。
1998年以降の金融危機による大不況を境に、この流れは急速に一般的になり、コンプライアンス、ガバナンス、アカウンタビリティといった横文字が、ごく当たり前のこととして、企業経営の根本的思想に入り込んできたわけです。
特にコンプライアンスなどは、今や実業界では中小零細企業でも経営上ごく当たり前の常識になっており、昭和の時代にはおよそそんなこととは縁遠かったタレントや芸人までもが、テレビ画面でコンプライアンスを口にする時代になったのです。
考えてみれば、テレビに登場するタレントや芸人は、今の時代を理解しそれに対応していなければ当然使ってもらえなくなるわけで、彼らがコンプライアンス浸透に敏感に対応したのはある意味で当たり前のことなのかもしれません。
吹けば飛ぶような、われわれ中小零細の企業経営者も、また同じでしょう。逆に時代の要請に一番鈍いのが、先のような不祥事に染まる昭和の大企業たちだったということになるのかもしれません。