コロナ禍の鉄道運転事故 乗客の死亡事故は「ゼロ」! 一方で増える輸送トラブル(鷲尾香一)

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線路内立ち入り、コロナ禍の影響関係なく増える

   一方、2020年度の線路内立入りなどでの接触による人身障害事故は、前年度から2件増加し182件だった。線路内への立ち入りについては、新型コロナウイルス感染症による利用者数の減少とは関連性が少ないという結果となった。

   運転事故の34.2%に当たる「踏切事故」では、歩行者によるものが80件(48.5%)と最多で、次いで自転車の62件(37.6%)、軽自動車17件(10.3%)、二輪6件(3.6%)となっている。

   最後に、輸送障害(列車の運休、旅客列車の30分以上の遅延等)の件数は、運転事故が長期的に減少傾向をたどっているのに反して、長期的に増加傾向にある。2020年度は前年同期比550件増加し、6216 件となった。

   鉄道係員、車両または鉄道施設などの部内原因に起因する輸送障害(全体の22.5%を占める)は同38件減少し1396件だった。また、線路内立入りなどの部外原因による輸送障害(全体の48.4%を占める)は、同322件増加して3009件となった。

   風水害、雪害、地震などの災害原因による輸送障害(全体の29.1%を占める)は、同266件増加し1811件だった。

   このように鉄道の運転事故は、新型コロナウイルスの感染拡大による利用者数の減少を受け、大幅に減少した。しかし、輸送障害はコロナ禍との関連性は乏しく、利用者が減少しても、障害件数は増加の一途を辿っている。

   ここ数年、首都圏などでは各線の乗り入れが増えたことで遠距離を走る列車が増えたことや、鉄道ファンが走る列車の撮影をめぐって列車の走行を止めたり、遅らせたりする輸送トラブルもみられる。

   鉄道は交通の要であり、その安全性を維持する必要がある。今後も、運転事故が減少するとともに、輸送障害も減少に転じていくことが重要となってくる。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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