2021年10月31日、第49回衆議院議員選挙が行われ、与党自民党は公示前の276議席から減らしはしたものの、絶対安定多数の261議席をキープした。
かたや、事前調査で党勢拡大が期待されていた立憲民主党はまさかの14議席減、共産党も2議席減となり、「野党共闘路線」は完全に有権者から「NO!」と突き付けられた形となった。
自民党と野党第一党(及び共闘した共産党)がともに議席を減らす一方で、躍進したのが第3極の日本維新の会だ。30議席増の41議席と、自民、立民につぐ第3党に躍り出た。もはやローカル政党ではなく立派な全国区政党と言っていいだろう。
唯一「改革」を前面に押し出した維新の会
とはいえ、各党がマニフェストを公開した段階で、すでに予兆はあった。各党が無難なバラマキ政策に終始するなか、維新のそれは異様なまでに改革を前面に押し出し、既存制度との全面対決をアピールするど派手なものだった。
他党はほぼ「国がお金出して重要産業を伸ばして経済成長させます」といった親方日の丸な内容だが、維新だけは「規制緩和で民間の活力を伸ばします」といった内容だ。
ちなみに、筆者が常に主張している「解雇規制緩和による労働市場の流動化」もきちんと明記してある。
従来から維新のマニフェストは攻めてはいたが、ここまでアクセルをふかしてはいなかったように思う。よほどの勝算があると踏んでいたのだろう。
岸田内閣に漂う「麻生政権臭さ」
話は変わるが、筆者は現在の岸田文雄内閣からは、2008年から約1年続いた麻生太郎内閣っぽい臭いを常に感じている。小泉改革の後を受けて成立しながら、郵政民営化反対派の議員を続々と復党させ、「自分は改革には賛成じゃなかった」などと言い放ち、改革を求める無党派層からそっぽを向かれて2009年に下野した、あの麻生内閣だ。
「行き過ぎた新自由主義を修正し、新しい資本主義を作る」と言い出した岸田さんは、筆者の目から見ると、当時の麻生さんと思い切りかぶって見えてしまう。
とはいえ、共産党と共闘する立憲民主党はとうてい改革派の受け皿にはなりえない。おそらく維新はそこに勝機を見出し、改革を強くアピールすることで自民党から漂流した無党派層を取り込みに行ったのだろう。
そして、それは見事に成功したように見える。
はっきりと示された民意
要するに、岸田さんというトンチンカンな総理の登場は、野党からすれば最大のボーナスステージだったわけだ。たとえば立憲民主党の枝野幸男代表もこんなアピールをしていれば、結果は変わっていたかもしれない。
「新自由主義の修正? 何言ってるんですか! 安倍さんは金融緩和ばかりで実のある改革なんて何もやってないじゃないですか! 我々は中身のある構造改革をどんどん推進し、サラリーマンのために働きますよ! 医師会が何言っても高齢者の医療費自己負担ももっと上げますし、消費税は上げても社会保険料は下げて見せます!」
そういう意味でいうと、よりによって上記の真逆のスタンスの共産党と共闘する枝野さんは絶望的に政治的センスがないと思われる。
氏が代表であるかぎり立憲民主党に上がり目はないだろう。
一つ付け加えておくと、今回意外だったのは国民民主党が3議席伸ばしたことだ。代表も政策も地味だが、野党共闘路線と一線を引いたことが意外に評価されたのだろう。
今回の選挙ではっきりと示された民意は「有権者は改革を求めている」という一点だというのが筆者の結論である。(城繫幸)