ファミマ、PBの名称を「ファミマル」に統一 「食べたらファミマのほうがおいしい」の声にイメージ戦略見直しを決断

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   ファミリーマートが、プライベートブランド(PB)の名称統一に動いた。

   「お母さん食堂」や「ファミリーマートコレクション」を、2021年10月19日から「ファミマル」に統一し、そのほかの「中食商品」なども新PBに統合していく。

  • ファミリ-マートの統一PB名が「ファミマル」になった
    ファミリ-マートの統一PB名が「ファミマル」になった
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810種類が「統一PB」に!

   PBは、メーカーが自前のブランドで製造して全国的に販売するナショナルブランド(NB)と違い、小売チェーンなどが自社だけで販売する独自商品。といっても、多くはNBのメーカーと共同で開発し、委託生産するもの。商品の中身を若干変えるとしても、小売りチェーンの販売力を背景に、NBより大幅に安いのがセールスポイントだ。

   ただ、近年は独自開発のオリジナリティあるPBも増え、たとえば、おにぎりやスイーツなどの食品は、各小売りチェーンが特徴ある商品開発にしのぎを削っている。

   ファミマはこれまで、日用品や菓子、加工食品の「ファミリーマートコレクション(ファミコレ)」、総菜や冷凍食品の「お母さん食堂」、高付加価値帯の「お母さん食堂プレミアム」の3ブランドを展開してきた。

   今回、ファミコレを「ファミマル」、お母さん食堂に、ファミマのロゴだけを記していた弁当、サンドイッチ、麺類など中食商品を加えて「ファミマルKITCHEN」、お母さん食堂プレミアムを「ファミマルKITCHEN PREMIUM」として、22年春までに整理・統合する。ファミマル約350種類、ファミマルKITCHEN約450種類、ファミマル KITCHEN PREMIUM約10種類の合計約810種類が統一PBなる。

   名称だけでなく、基本のロゴに、ひと目でファミマとわかる青・緑・白のブランドカラーを使用するとともに、中身を真上から撮り、「ファミマル」のイメージに合わせた円(マル)をデザインした統一感のあるパッケージを採用。売り場全体でアピールし、ブランドの浸透を図っていくという。「国産米100%使用」「生乳仕立て」「直火二度焼き製法」など特徴がわかる丸いアイコンも採用した。

「ファミマ」ブランドの見直しは急務だった

   ファミマは、セブン-イレブン・ジャパンの「セブンプレミアム」(2007年発売)、ローソンの「ローソンセレクト」(2010年発売)に遅れ、大手コンビニ3社では最後発のPBとして2012年に「ファミリーマートコレクション」を世に出した。その後、ファミコレの中から惣菜類を切り出して「お母さん食堂」を2017年に発売。「おふくろの味」をイメージし、家庭の食卓に出る比率が高いおかずをラインアップし、その後冷凍食品のおかずにも広げていた。

   日用品では、2019年3月に無印良品の取り扱いを止め、ファミコレ商品を強化。ファッションデザイナーの落合宏理氏を起用してデザインにこだわるとともに、さらさらとした肌触りを重視したインナーシャツや靴下などを開発するなど、「コンビニ衣料は緊急時に買うもの」という印象の払しょくにも努めていた。

   ただ、それぞれにいい商品の開発に努めても、全体としてのブランドのイメージアップは不十分だったようだ。消費者を対象にファミマが実施したアンケートで、ハンバーグについて、業界1位のセブンのPBとファミマのPBで「どちらが美味しいと思うか」と尋ねたところ、イメージでは9割近くがセブンの商品が美味しそうだと回答したという。実際に試食してもらった後の感想では「ファミマのほうが美味しい」との回答が過半数を占めたといい、イメージ戦略の見直しが必要と判断した。

   特にセブンプレミアムはセブン-イレブンだけでなくセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカドーでも展開するだけに、ブランド力は抜きん出ており、ファミマとして、ブランド戦略の見直しは急務だったということだ。

   今回の刷新に合わせ、PB売上比率を、2024年度末までに現在の30%から35%以上に引き上げる目標も打ち出した。

遠因か? 高校生が「お母さん食堂」の名称を批判

   今回の見直しに「お母さん食堂」の名称への批判が作用した可能性があるとの見方もある。性的役割分担の固定化につながるとして、高校生がネットで署名活動を呼びかけ、約7300筆をファミマに提出した。インターネット上で論争になったほか、テレビのワイドショーでも取り上げられ、喧々諤々の論争が戦わされる騒ぎになった。

   足立光マーケティング本部長は10月18日の会見で、「(ブランドの)刷新は以前から決まっており、署名活動自体は刷新の意思決定の要因になっていない」と関係を否定。「すべての性別、世代の皆さんに受け入れられるような名前やコンセプト、パッケージを含めて、十分な検討をした結果がファミマルになる」と述べた。

   ただ、ブランドや商品の名称については、近年、消費者の目も厳しさを増している。ファミマは21年3月、PBの衣料品の女性向けの下着で「はだいろ」と表記でいたのが「不適切だった」として、店舗から回収した。白人、黒人など多様性への配慮に欠け、不適切ではないかと社員や加盟店から指摘する声が出たという。

   多様性がキーワードになる時代、小売業は、こうした問題にも細心の注意が求められている。

(ジャーナリスト 済田経夫)

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