「令和の所得倍増」も「金融所得課税」も引っ込めてしまった岸田文雄首相の「キシダノミクス」。期待は「分配」によって、格差を是正してくれることだろうか――。
一方、野党側も選挙公約に多くの「バラマキ」を打ち出している。こうした与野党の経済政策。エコノミスたちはバッサリと斬った。
期待してはダメなのだろうか?
「デジタルと温暖化対策を語れば成長戦略に見える」
一方、キシダノミクスだけでなく、野党の経済政策のお粗末さを批判するのが、第一生命経済研究所の経済調査部首席エコノミストの熊野英生氏だ。
「衆議院選挙の政策比較~各党が給付金を競う~」(10月19日付) で、こう呆れている。
立憲民主党が、年収1000万円程度までの所得税減税、低所得者への年間12万円の現金支給、消費税率を時限的に5%に引き下げ、国民民主党も国民一律10万円、低所得者には20万円の給付などを掲げていることに対して、
「筆者が、与党以上に、野党がここまで財源を無視した減税・給付を主張するとは夢にも思わなかった。財源を明らかにせず、巨大な費用のかかる政策を打ち出すのでは、仮に自らが政権交代をしたときに困るのではないか」
と心配したのだった。
そして、成長戦略こそ訴えるべきだと、こう指摘した。
「今回の選挙では、各党の給付金が前面に押し出されて、成長戦略の議論が手薄な印象がある。野党には、既存の成長戦略が色あせるようなアイデアの提案が期待されるのに、そうした期待感の受け皿になっていないのが気になる。
立憲民主党は、再分配政策が手厚い代わりに、成長戦略は手薄だ。デジタル、通信、自動運転などの研究開発支援などへの言及が公約の中にはあるが、あまり深掘りされていない」
その点は、キシダノミクスも同様だ、と問題視する。
「成長戦略についても(自民党総裁選時の議論より後退した)印象だ。政治的には、デジタルと温暖化対策を語っていれば、成長戦略の話をしているように思えるかもしれない。しかし、現実的な問題として、海外のプラットフォーム企業に対抗していく方策や、カーボンプライシングをどう始めるかを議論すると、テーマの難しさを実感するはずだ。そうした一歩踏み込んだ議論が行われそうに感じられないところには、少し残念に思える」