「税金は廃止して必要な予算はすべて国債で賄う気か」
一方、財務省の矢野康治事務次官が月刊誌で「バラマキ政策だ」と与野党を痛烈に批判したことを「矢野氏の危機感に全面的に賛同する」として、財政再建に目を向けないキシダノミクスの批判したのが、明治安田総合研究所のフェローチーフエコノミスト、小玉祐一氏だ。
「いつまでも逃げられない財政再建」(10月18日付)の中で、矢野氏を非難した与野党幹部らから、日本が財政破たんすることなどあり得ないという論調が飛び交ったことを、こう批判した。
「考えてみれば、『景気が回復すれば財政は改善するので増税は不要』という類の主張は昔から常に存在してきた。55年体制のもとでは社会党がそう述べていた。しかし、ヒストリカルデータは、景気回復でもそうならなかったことを示している。
なかには財政問題は存在しないと主張する人までいる。天からお金が降ってくるようなうまい話はない。たとえば、国内通貨建ての債務はいくらでも出せるという議論がある。何事も極論から入るとわかりやすいが、そうであれば、世の中の税金はすべて廃止し、必要な予算はすべて国債で賄うべきだ。それができない以上、どこかに限界があるはずだ。
誤解されがちだが、MMT(編集部注:『財政健全化しなければ財政破綻する』という常識に真っ向から反論する現代貨幣理論)も無限に財政拡張が可能と主張しているわけではない。インフレが起きるまではという但し書きがついている」
そして、小玉祐一氏はこう結んでいる。
「バブルは崩壊しないとわからないというが、国債は最後のバブルかもしれない。日本国債の保有構造が強固なのは確かだが、限界を試すような拡張財政路線が今後も続く可能性は低くない。地震は、先に行けば行くほど、いざ来た時のマグニチュードが大きくなるとされていることを忘れてはならない」
(福田和郎)