Z世代の消費行動を知る! 個人的なつながり、ブランドへの信頼、SNSの情報が企業の生死を分ける!?

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   アメリカでは生まれたときからデジタルデバイスに慣れ、多感な年頃にコロナ禍を経験している「Z世代」への対応がマーケティング関係者の関心を集めている。

   本書「Z世代マーケティング」は、数年後に市場の主役となるZ世代の行動様式を詳細に読み解いた本だ。日本ではようやくZ世代が注目されるようになってきたが、アメリカでの動きは早晩、日本にも伝わってくるだろう。

「Z世代マーケティング」(ジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラ著)ハーパーコリンズ・ジャパン
  • Z世代の消費行動を知ろう!(写真はイメージ)
    Z世代の消費行動を知ろう!(写真はイメージ)
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Z世代はすでに既存企業のビジネスを危うくしている

   Z世代について本書では、こう説明している。

「1996~2012年生まれ。幼いころからスマホ、Google、SNSを使う。9.11を知らない・覚えていない。コロナ禍で学業や就職に影響を受けている。リーマンショック後の大不況を経験した親を持つ。上の世代から受け継ぐ資産は20~30兆ドル規模」

   アメリカでは1965~1976年生まれをX世代、1977~1995年生まれをミレニアル世代(Y世代)と呼び、世代ごとの消費行動の違いを分析してきたが、今注目されているのが、Z世代だ。

   著者のジェイソン・ドーシー氏は世代研究の専門家。世代について調査・助言・講演するCGK(センター・フォ・ジェネレーション・キネティクス)の共同設立者・所長。メルセデス・ベンツなどの世界的大企業を顧客に持つ。もう一人のデニス・ヴィラ氏はCGK共同設立者・CEO。CGKでは、2016年から「Z世代の実態」という調査報告書を発表してきた。そこで浮かび上がってきたのが、彼らがほかの世代と大きく異なるということだ。

   Z世代はすでに既存企業のビジネスを危うくしているという。アメリカでは都市の規模にかかわらず多くのショッピングモールで空き店舗が目立つようになってきた。この傾向はミレニアル世代から始まったが、Z世代がとどめを刺そうとしているそうだ。

   Z世代にとっての「普通」は、クルマに乗って買い物に出かけることではない。アマゾンでワンクリックして購入し、商品をその日のうちに送料無料で受け取ることだ。

   また、Z世代にはLyft(リフト)をはじめとしたオンデマンドの移動手段があるため、新車の値上がりや保険料を考え合わせれば、早く運転免許を取ろうとしない。さまざまなサービスについても同じことが言える。Airbnb(エアビーアンドビー)は、Z世代には普通の宿泊手段になっている。

   決済・送金アプリのVenmo(ベンモ)やCash App(キャッシュアップ)で友人に送金したり、食事代を割り勘にしたりしている。彼らはテクノロジーや情報、世界に対して「普通」の根本的な再定義を迫っている、と指摘している。

   Z世代は今後のビジネスに多大な影響をもたらし、最終的にはビジネスを根こそぎ変えるかもしれないという。彼らは2年もしないうちに労働市場での勢力を急拡大させ、消費者やトレンドセッターとして最重要の世代に成長させるからだ。

なぜ、ファストファッションが好まれるのか?

   著者らが行った調査では、次の3点がZ世代という購買層を引き付けるカギだという。

・価格
出費に値するか。保守的で現実的な経済感覚を身につけ、値段設定に敏感である。
・パーソナライゼーション
ターゲティングされていない一般的な広告には目もくれない。
・社会的責任
利益以外のものにも心をくだき、自社が世の中の役に立つことを示すべきだと考えている。

   Z世代の消費行動をさまざまなジャンルで解き明かしている。アパレルでは、従来の服飾店の客足が減り、短いサイクルで安く売るファストファッションが好まれ、古着店の販売が伸びている。Z世代では裕福か否かにかかわらず支持されている。ブランド品が安く手に入り、新しい発見があり、友人との付き合いが深められるところが刺さっているという。

   コスメ・美容ではZ世代はメイクのトレンドを追いかける側と発信する側の両方で主役となっている。インフルエンサーが自分と同世代という夢のある世界だからだ。Z世代はハウツー動画が大好きで、どのコスメを使えばいいか分からないときはYouTubeとTikTokを参考にしている。

   単なる商品以上に支持されている美容ブランドにはLUSH(ラッシュ)がある。気候変動への問題意識をビジネスのあらゆる部分に織り込んでおり、美容業界のパタゴニアとも言える企業だという。「地球を救うためのコスメティックレボリューションを起こす」とうたい、動物性原材料を使わず、動物実験をせず、ハンドメイドにこだわっている。そんな姿勢が支持の理由のようだ。

   Z世代は節約志向であり、浮いたお金はスマホの決済アプリや銀行アプリに入金している。あらゆる銀行サービスを店頭に行かずにできる未来を期待しているという。すべての銀行にとってZ世代は大きなチャンスだ。シームレスなデジタルバンキングの創出が課題となる。

Z世代は自動運転車に乗りたがっている?

   自動車業界にとってZ世代は業界全体を破壊する「ニューノーマル」の始まりになるかもしれない、と警告している。著者らが全米で行った調査によると、Z世代は自動運転車への乗車意向が非常に高いという結果が出ている。

   運転免許を急いで取らないという選択は普通になっている。10代で運転免許を取得する割合は1980年代から2割近く減少している。それでも自動車に乗ると決めたZ世代は、環境に優しい電気自動車を望む傾向があるという。

   Z世代の購買行動を決める要因は、個人的なつながり(家族や直接の知人)の紹介、ブランドやプラットフォームへの信頼、SNSからの情報だという。広告も変わらざるをえないようだ。

   本書が取り上げているのは、アメリカが中心だが、いずれ日本の若者の消費行動にも影響が出てくるだろう。アマゾンでの購買、古着志向、クルマへの低い関心などは、すでに日本でも見られる傾向だ。だからこそ、日本の企業も今からZ世代への対応を検討すべきだ。

   本書では、Z世代の目に世界はどう映っているか考える、自社の従業員または顧客であるZ世代から体験を聞く。Z世代がいるところにリーチする、ことを勧めている。

   消費行動ばかりではない。彼らは「働き方」も変えようとしている。本書ではかなりのページを割いて「Z世代への正しい求人活動」を取り上げている。Z世代を無視しては企業の存続も危うくなりそうだ。(渡辺淳悦)

「Z世代マーケティング」
ジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラ著
ハーパーコリンズ・ジャパン
2090円(税込)

 
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